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「お待たせ」 着地したシルフィードからぴょんと飛び降りて、キュルケは開口一番そう言った。 「お待たせじゃないわよ!何であんたがここにいるわけ!?おまけにタバサまで・・・あっ、あとギーシュも」 「『あっ』てなんだい『あっ』て」と呟くギーシュには眼もくれず、ルイズはキュルケに詰め寄る。 「助けに来てあげたんじゃないの 今朝廊下からあなた達が『姫さま』だの『任務』だの話してるのが聞こえてきたのよ 面白そうだからついてきたってわけ」 キュルケは本当に心底面白そうな顔でそう言った。 「あのねキュルケ、これお忍びなの 会話を聞いてたのならそれくらい察しなさいよ」 ルイズは呆れ顔で指弾するが、 「なんだ、そうだったの?言ってくれなきゃ分からないじゃない」 キュルケはそうしれっと言ってのけると、折り重なって倒れている男達に眼を向ける。 「ところでこいつら何なの?そこの素敵なアナタ、魔法衛士隊とやらの隊長なんでしょう?この国ではグリフォンはグリフォン隊の象徴だって言うじゃない いくら大人数とはいえ、そんな人間を物取り目的で襲うものかしら?」 「ふむ しかしこの任務は姫殿下が私とルイズだけに内密で依頼したものだ 情報が漏れるとは考えにくいが・・・」 ワルドが顎髭をいじりながら応答する。それを聞いて、「ハイハイッ!」とギーシュが元気に手を上げた。 「はいギーシュ君」 キュルケがどうでもよさげに相手をする。 「こういうときこそ尋問じゃないか 僕に任せてくれたまえ」 一度やってみたかったんだなどと言いながら、ギーシュはまだ意識のある男の前に腰を落とす。身振り手振りを交えながら二言三言何かを話すと、ふんふんと頷いて立ち上がった。 「皆!彼らはただの物取りだって言ってるフんッ!!」 キュルケの掌底が綺麗に決まった瞬間であった。 「な、なんてことするんだねキュルケ!舌を噛んだらどうするつもりだよ全く・・・」 頭から倒れたギーシュは顎と後頭部をさすりながら立ち上がった。実にタフな男である。そんな彼をキュルケは屠殺場の豚を見るような眼で一瞥して言う。 「今のは尋問じゃなくてただの質問じゃない このバカ王子」 「バッ・・・!?」 「もういいからどきなさい 私がやるから――」 そう言いかけたキュルケを、横合いから突き出た一本の手が遮る。いいストレス解消を見つけたギアッチョだった。 「尋問ならよォォ~~、オレに任せな・・・ もっとも、拷問にならねえ保障はねぇがよォォォォ」 捜し求めていた玩具を見つけた喜びに、ギアッチョの顔がかつてないほど凶悪に歪む。その慈悲の欠片もない形相に、キュルケ達どころか今から尋問を受ける男達までもが震え上がった。 「・・・ああそう・・・・・・じゃあお任せするわ・・・ ・・・ほどほどにね・・・」 心の中で男達に合掌しながらキュルケは後じさった。ギアッチョはゆっくりと男達に近寄り、肩越しに振り返ってギーシュを見る。 「てめーも見るか?後学の為によォォォ~~」 ギーシュは首をブンブンと取れそうな程に振って遠慮の意を表した。 ギアッチョはフンと鼻を鳴らして笑うと、 「それじゃあてめーらは後ろを向いてな 女子供にゃ少々刺激が強いからよォ~」 実に楽しそうにそう言った。 光の速さで後ろを向いたギーシュに続いてルイズとキュルケが身体の向きを反転させる。その直後、彼女達の耳に微かに何か軽快な音楽のような幻聴が響き、数秒の後それを掻き消して、 「ウんがァアアアアーーーー!!」 という絶叫が轟いた。 「終わったぜ」 というギアッチョの声で恐る恐る振り向くと、彼の後ろでは数人の男達がピクピクと痙攣しながらのびていた。 よかった五体満足だ、と敵の安否を気遣ってからルイズ達はギアッチョの狼藉を見ていた二人に眼を向ける。ワルドの顔は微妙に血の気が引いていた。 口の端は妙な形に引き攣っている。タバサに視線を移すと、彼女はいつもの人形のような無表情のまま固まっていた。 デルフリンガーは小刻みに震えながら、もっとも恐ろしい者の片鱗を味わったなどとぶつぶつ呟いている。 そしてギアッチョは、信じられないことにまだ暴れ足りないといったような顔で首の骨をコキコキと鳴らしていた。「白い仮面をつけた貴族の男に雇われたらしいぜ」とあっさり手に入れた情報を話しているが、もう誰も彼の声など聞こえていなかった。 ギアッチョを除いた全員がそれこそホワイト・アルバムを喰らったかのように凍っていたが、やがてワルドがなんとか我を取り戻す。 「・・・さ、さあ皆 はやく宿まで行ってしまおうじゃないか ほら、もうここから見えてるよ」 彼はどうにかそう言葉を絞り出し、そこから彼らの泊まる『女神の杵』亭まで皆殆ど口をきかずに歩き続けた。なんとかルイズと話題を作ろうとして、 「・・・確かに凄い使い魔だね・・・彼は・・・」 と言ってみるが、ルイズは「あはは・・・は・・・」とただ乾いた笑いを返すだけだった。 宿の扉をくぐって、ルイズ達はようやく我を取り戻した。ぷはぁ、と息を吹き出して「なんかどっと疲れたわ・・・」とキュルケが言い、それを引き金にルイズ達の身体からは次々と力が抜けていった。ぽつぽつと会話が始まり、彼女達はようやくいつもの空気を取り戻す。 ギーシュが周りを見渡すと、タバサは懐から本を取り出し、キュルケはあくびをし、ルイズはギアッチョに怒鳴り始めた。「君、凄いね」という視線をルイズに送ってから、同じく緊張が解けたギーシュはへらへらと笑いながら軽口を叩く。 「しかし疲れたね どうにも運動不足らしい・・・これだけ歩いただけで足が棒になったよ」 それが、いけなかった。 「・・・てめー・・・今なんつった・・・?」 「え?」 ルイズの怒鳴り声など全く耳に入っていないかのような動きで、ギアッチョはギーシュに眼を向ける。 ワルドを除く全員の脳裏に一瞬である一つの予感がよぎり、「疲れたってのは分かる・・・・・・スゲーよく分かる てめーらは移動に魔法を使いまくっとるからな・・・」 それは三秒で的中した。 「だが『足が棒になる』ってのはどういうことだァァ~~~ッ!?人の足が棒に変わるかっつーのよォォォッ!!ナメやがってこの言葉ァ超イラつくぜぇ~~~ッ!!棒になったらその場で倒れちまうじゃあねーか!なれるもんならなってみやがれってんだ! チクショーーーッ!!」 事態を把握した三人娘の心は一つだった。ルイズが宿の扉を空け、キュルケがギーシュを押してギアッチョにぶつけ、そしてタバサがウインド・ブレイクで二人纏めて宿屋の外へ吹っ飛ばした。 地面に転がったまま絶望的な表情でこっちを見るギーシュから全力で眼を逸らして、ルイズは「ごめん」と一言呟くが早いかバタンと音を立てて扉を閉めた。 「えええええ!?ちょっ、何やってんの!?冗談だよね!冗談だよね!!」 ギーシュは弾かれたように跳ね起きると、ぶつかるほどの勢いで扉へ駆け寄った。 「ギーシュ!あなたの犠牲、わたし達は敬意を表するッ!!」 「か、『鍵が閉まっているッ』!!いやいや何言ってんのキュルケ!!開けてーー!! お願いだから開けてーーー!!ていうか助け・・・」 必死の形相でそう叫びながらギーシュはドンドンと扉を叩くが、あえなく時間切れとなる。ガシィ!!と後ろから肩を掴まれて、彼は恐怖の叫びを上げた。 「どういうことだ!どういうことだよッ!!クソッ!!棒になるってどういうことだッ!! ナメやがって!クソックソッ!!聞いてんのかてめー!!ええ!?クソッ!クソッ!!」 「ヒィィィイ!!どうして僕ばっかりがァアァアアァァ!!」 扉を通してギーシュの断末魔が宿屋に響き、ルイズ達は瞳を閉じて彼に黙祷を捧げた。 ワルドは普通にドン引きだった。 ボロ切れと化したギーシュを引きずってギアッチョが戻って来たので、一行はまずは一階の酒場で一服することにした。 ギーシュの恨みがましい視線を受けながら彼女達はしばらく歓談していたが、 「さて、僕は『桟橋』へ乗船の交渉に行ってこよう 君達はゆっくり食事でもしていてくれ」 頃合を見てワルドが立ち上がった。マントを翻して彼が扉の向こうへ消えるのを見届けてから、 「イヤッホォォォウ!やっと食事にありつける!」 ギーシュは両手を上げて吼えた。実に現金な男である。とは言え、彼が機嫌を治してくれたことは有り難かった。 ウェイトレスが持ってきたメニューを覗き込んで、ルイズ達はあーだこーだと言い合いながら料理を決めてゆく。一通り注文する ものを決め終えて、ルイズは隣に座るギアッチョを見た。 「ギアッチョ あんたはどれにするの?」 「ああ?前に言ったろーが 言葉は喋れても文字は読めねーんだよ」 「あ・・・そうだったわね あんまり流暢に喋るからすっかり忘れてたわえーと、まずこれが・・・」 ルイズはひょいと身体をギアッチョのほうに傾けると、メニューの文字を指差してギアッチョの顔を見上げながらあれこれ説明をする。 ギーシュはそんな二人をなんとはなしに見ていたが、ふと面白いことを考えて隣のキュルケを見た。 丁度同じことを考えていたらしい彼女と眼が合うと、二人して悪戯っぽくにやりと笑う。ルイズは未だにメニューの説明中で、 「うーん・・・あとはこれとか美味しいわよ 牛肉と卵を・・・」 などと言っている。ギーシュは「君!君!」と会話に強引に割り込むと、 「これこれ、凄くオススメなんだけどどうかな!はしばみ草のサラダなんだけど――」 輝かんばかりににこやかな顔でサラダを勧めた。 「ちょ、ちょっとギーシュ!あんたまだ懲りないの!?」 何かを察したルイズがそれを止めようとするが、いつの間に呼んだのかそばに来ていたウェイトレスに、既にキュルケが最高のコンビネーションで注文を終えていた。 ドン、とテーブルに料理が並ぶ。色とりどりのそれらの中に、はしばみ草のサラダはあった。 所狭しと置かれている料理に手もつけず、ギーシュとキュルケは何かに期待しているような眼でギアッチョを見ている。 同じく彼を見ているタバサの瞳にはうっすらと興味の色が伺える。 そして彼のご主人様は、何かを心配するような顔でギアッチョとギーシュ達を見比べていた。 ――・・・何なんだこいつら・・・ 四色四対の瞳が全て自分を注視しているのである。正直言って気持ち悪い。 理由は分からないが、とにかくこいつらは自分がこのはしばみ草のサラダとやらを食べることに期待しているらしい。 得体の知れない期待に一つ溜息をつくと、ギアッチョはサラダに手を伸ばした。 はしばみ草。それは地球にはない独特の苦味を持つ植物である。その名状しがたい苦味の為に、好んで食べる者は少ない。 以前ルイズの父が誤ってそれを食べ、ブフォッという音を立てて見事に口から吹き出したことがあった。 厳格な父の有り得ない姿とその後の怒りように、ルイズははしばみ草のことを強烈に覚えていた。 はしばみ草がギアッチョの口に合えばいいが、そうでなければギーシュとキュルケはこの食事が最後の晩餐になるかも知れない。 ルイズはそんなわけで彼らの命の心配をしているのだが、当の二人は悪戯心と復讐心で後のことなど一切考えていなかった。 そんな彼女達の心も知らず、ギアッチョはあっさりとはしばみ草をフォークで突き刺す。 彼は無表情のままそれを口に放り込み、そして無表情のまま咀嚼し、ついに無表情のまま嚥下した。 ――な・・・なんて男だ!顔色一つ変えないぞッ!? はしばみ草を胃に送り込んで尚表情を変えないギアッチョに、ギーシュとキュルケは眼を見開く。 タバサは少しだけ嬉しそうな顔を見せ、ルイズは胸をなでおろした。 ギアッチョは無表情のままスッとフォークを置き、静かに席を立つと、4メイルほど離れた場所にある部屋へ静かに入って行く。 トイレだった。 そのままギアッチョは一分経っても戻らず、二分が過ぎても戻らず――そこまできて、ギーシュとキュルケはようやく嫌な予感がし始めた。 「・・・ね、ねえキュルケ・・・ これってひょっとして凄くヤバいんじゃないかな・・・?」 「・・・わたしもそんな気がしてきたわ・・・・・・」 不気味に静まり返るトイレが、芽生え始めた彼らの恐怖を加速する。 「どっ、どどどどどうしよう!!」 キュルケはガタガタと震え始めるギーシュの襟首を掴んで、 「ええい逃げるわよッ!!」 一目散に外へ逃げようとする、が。 「えっ!?」 「なっ!?」 二人の足は、その場から一歩も動かすことが出来なかった。 「ぼッ、僕達の足がァァァ!!」 「こ・・・『氷で固定されている』ッ!!」 二人の足は容赦なく凍結されていた。そして炎の魔法でそれを溶かす間もなく、氷よりも冷たい双眸に灼熱の怒気を纏わせて、ギアッチョが姿を現した。 「・・・や、やあお帰りギアッチョ・・・ はしばみ草のお味は ど、どうだったかな?」 一縷の望みを掛けて、ギーシュは蒼白な顔に無理やり笑みを浮かべて尋ねる。 「ああ・・・実に美味かったぜ 意識が飛ぶほどな・・・」 そう言ってギアッチョはニヤリというよりはニタリと表現するべき笑みを返した。 はしばみ草のあまりの美味さに一瞬のうちに阿頼耶識を潜り普遍的無意識を越え銀の鍵の門を通ってオオス=ナルガイを旅し未知なるカダスに至ったギアッチョの意識が現実世界に戻ってまず思ったことは、「よし、こいつら殺す」ということだった。 その後の展開は語るまでもないだろう。 こうしてラ・ロシェールが誇る高級旅館『女神の杵』亭は、昼は変な男が宿前で暴れ、夜は二人分の悲鳴が轟き、深夜は氷付けになった男がベランダに放置される恐ろしい宿として数ヶ月の間その評判を落とすことになったのである。 「一つ、聞き忘れていたことがあった」 薄汚い酒場で、仮面の男は土くれのフーケと会話をしていた。 「・・・なんだい」 男に一瞥をくれてから、フーケは煩そうに髪をかきあげる。 「貴様を倒したのは、あの得体の知れない平民の使い魔だったな」 「それがどうしたんだい」 その質問に、フーケの顔はいよいよ不機嫌さを増す。 「奴の力を教えろ」 有無を言わさぬ口調で仮面の男が命令する。しかしフーケはどこ吹く風で嘲笑うと、 「嫌だね」 と一言そう言った。フーケは脱獄と引き換えに自分達への協力を約束させられている。 しかしその実、それは「従わなければ殺す」という約束とは名ばかりの脅迫であった。己の目的の為の道具として扱われることに、フーケは強い不快感を抱いている。 「貴様・・・死にたいのか?」 「フン、やれるもんならやってみるがいいさ あたしだって土くれのフーケと呼ばれた女・・・こんな姿でも、あんたを無事で済ませるつもりはないよ さて、それであんたはそうして消耗した状態で任務に挑むつもりかい?」 フーケはニヤリと笑った。仮面の男は決して失敗出来ない任務を負っている。 無駄な消耗など出来るはずがなかった。 「――くだらん知恵が働くようだな」 そう吐き捨てて、男は出口へと歩き出す。 「一つだけ教えてあげるわ」 その背中に、フーケは勝ち誇った笑みを浮かべて言葉を投げつける。 「あいつは『ガンダールヴ』よ」 「・・・何だと」 唐突に登場した「伝説の使い魔」を表す言葉に、仮面の男はフーケに振り返るが、しかし彼女はもはや何も言う気はないといった仕草で手を振る。男はそんなフーケを忌々しげにねめつけると、二度と振り向かずに歩き去った。
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前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ ももえが言っていた悪魔は数ヶ月前からトリステイン中に繁殖していた。 トリステイン中の貴族を恐怖に陥れた盗賊である『土くれ』のフーケもその悪魔にとり憑かれた一人である。 当初は貴族の宝物を奪うだけのただのコソ泥だった彼女が、たまたま日蝕がおこったその日に突然覚醒した。 「ああぁああああああああああああ!!!!!!!」 くぎみーがセッ○スと言うその日まで 「ゼロの使い魔死神友情フレイムデルフリンガーシルフィード香水下級生ももえサイズ」 数日後、謹慎が解けて授業に出ることを許されたルイズは2年生になって初めて授業を受けた。 一言で言えば『悲惨』だった。どこがどう悲惨だったのかはルイズ自身思い出したくなかった。 「ねえねえさっきの爆発ってどうやってやったの?」 「うっさいわね! だから知らないって言ってるでしょうが!」 ももえは下級生であったケティの制服を着ていた。そして香水の効果からか誰もルイズの元によって来る人が居なかった。 「臭いからだ。」 「だから臭くないってば!」 そんなやりとりをしているとキュルケがルイズに声をかけてきた。 「ねえ、突然だけど私と勝負してみない?」 「あ、ごめん 私、パス」 ルイズは鞄を持ってさっさと教室から出ようとした。 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんた、このライバルである私に喧嘩を売られてなんとも思わないの?」 「えー………どうせももえを賭けて戦ったりするのよね? それなら私の負けでいいわよ。いつ寝首をかかれるか分からないこの不安で仕方ない状況から解放されるなら」 頑なに勝負を受けようとしないルイズ。それを見かねたタバサがルイズに再度お願いをした。 「お願い。もしキュルケがルイズに負けたらあの使い魔を上手いこと使って追い出してあげる」 「本当っ!?」 ルイズの目の色が変わった。 「決闘のやり方は審判員である私がコイントスをしてコインが地面に落ちたときに始めるの。 そしてそのコインが落ちるまでは振り返ることなくただ後ろを向いて歩き続ける。 コインが落ちる前に振り向いたりしたらその時点で相手の勝ちが決定になる。―――これでいいの?」 発案者であるタバサはももえの上から左親指を立てていた。シルフィードの能力を使ったももえは空を飛びながらコインを落とした。 「今よっ!!!!」 渾身の一撃をかまそうと杖を向けたルイズであったが………そこにキュルケはいなかった。 そして、横を向いてみると居た。 そこにはキュルケが大きなゴーレムに捕まっている姿が映っていた。 「お取り込み中のところ悪かったねぇ………」 30メイルぐらいはあると思われるゴーレムの肩に乗っている女は悪びれる様子も無くそう言い放った。 「早くキュルケを返しなさい! まだ用事は済んでないのよ!」 「そうはいかないねえ。この娘は大事な人質なんだから、手放すわけには行かないよ。」 そしてキュルケは女と一緒にゴーレムの中に取り込まれ、ゴーレムから大きな咆哮があがった。 「うおおおおおおおおお!!!!!」 「あ、ロボットだ。」 上空で、そのゴーレムと似たようなものを見たことがあるももえがのん気にそう呟いた。 ???ものしり館??? ロボットアニメ ロボットが活躍するアニメーションを指す 代表作は「To Heart」「魔法少女リリカルなのはStrikers」など 女と同化したゴーレムは勢いのまま宝物庫の壁を殴った。しかし、壁にひびがわずかに入っただけでどうにもなりそうにない。 「うおおおおおおおおお」 それでもゴーレムは諦めることなく壁を殴り続ける。 その様子にルイズはしばし呆然としていたが、気を取り戻して本来キュルケにぶつけるはずだったファイアーボールで攻撃をする。 「きゃあっ!」 ルイズは思わずガッツポーズをした。自分の攻撃が確実にゴーレムにダメージを与えている。嬉しさの余韻に浸るまもなく次の攻撃を加えようとした時 「危ないぞ ミス・ヴァリエール!」 ルイズは思わず声のした方向に顔を向けた。それを見た瞬間あまりの驚きに顎が外れるのではないかと思った。 「きょ、虚無の塔に………手足がついてる。しかも飛んでる………」 虚無の塔はゴーレムに真空飛び膝蹴りを食らわせた。ゴーレムは後ろに吹き飛ばされた。 「タケノヤスクナズチじゃ!」 「何それっ!?」 中から学院長であるオールド・オスマンの声がした。 「タケノヤスクナズチ」と言っているものはこの、虚無の塔に気持ち悪い手足が生えて半ズボンをしている代物の事なのだろうか? ルイズは眩暈がしてきた。 「望むところっ!」 ゴーレムはすぐに立ち上がり、助走をつけて右手を上げる。 「はあああああああっ!タケノヤミカヅチから繰り出されるパンチを食らええええええええっ!!!!!」 「小癪なっ!」 対するタケノヤスクナズチも左手を上げ拳と拳がぶつかりあう。 両者は片方の手でも拳を作って殴りかかるが双方の拳によって防がれた。そして取っ組み合ったまま時間はいたずらに過ぎていき、 「………もう少し広い場所で戦わんか?」 「同感だ……。」 そんなやり取りを残して、二機は上空めがけて飛び立っていった。 「………」 「………」 「………ねえ、タバサ。この使い魔なんとかしなさいよ。」 「任せて」 タバサはそう言うと自分の頭の上にある空間を指差した。 「ここを斬って」 ざしゅっ 「ねえ、タバサ。今のはどういうことなの?」 説明を求めたルイズにタバサはこう答えた。 「今のはただの幻像。つまり裏設定」 「裏設定?」 『ももえのカマで斬られた物の存在はももえが肩代わり』 すると黙り込んでいたももえが急に口を開いた。 「あっ、ルイズ達を連れて田舎に帰らなきゃ。」 そう言ってももえはカマを持って歩き出した。 「ちょ、ちょっとどこ行くのよ!」 「いや、田舎に帰って病気になってるママの見舞いに行かないと。」 「………今から?」 「うん、今から」 こうしてタバサの裏設定を肩代わりしたももえとただの青髪少女になったタバサとルイズとで里帰りに向かうことになったのである。 ※ おわり これまでのご愛読 ご支援 ありがとうございました ※ 次回より始まる「ゼロの使い魔死神友情タバサの裏設定フレイムデルフリンガーシルフィード香水下級生ももえサイズ」に乞うご期待!!! 前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ
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峡谷の山道に作られた小さな港町、ラ・ロシェール。その酒場は今、内戦状態のアルビオンから帰って来た傭兵達で溢れ返っていた。 「がっははははは!アルビオンの王さまももうおしまいだな!」 「いやはや・・・『共和制』ってヤツが始まる世界なのかも知れないな」 「そんじゃあ『共和制』に乾杯だ!」 そう言って野卑な声で笑う彼らが組していたのは、アルビオンの王党派だった。 雇い主の敗北が決定的になった瞬間、彼らは王党派に見切りをつけてあっさり逃げ帰ってきた。別段恥じる行為ではない。金の為に傭兵をやっているのだから、敗軍に付き合って全滅するほど馬鹿らしいことはないということである。 ひとしきり乾杯が終わった時、軋んだ音を立ててはね扉が開いた。フードを目深に被った女が車輪のついた椅子に座っており、白い仮面で顔を隠した貴族の男がそれを押しながら入ってくる。 真円に可能な限り近づけようと苦心した跡が見てとれるその車輪はしかし急ごしらえの為に満足な丸さを持てず、回転する度に耳障りな音を立てて車体を揺らした。女はローブに隠れる己の足を見下ろし、忌々しげに舌打ちする。 「不便ったらありゃしないね・・・この車椅子とやらは」 「そう言うな、お前の為に急いで作らせたものなのだからな」 仮面の男はそう言って車椅子を止めると、珍しいものを見て固まっている傭兵達に向き直った。 「貴様ら、傭兵だな」 その言葉と同時に、返事も確認せずに金貨の詰まった袋をドンとテーブルに置く。 「先ほどの会話からすると、貴様らは王党派に組していたようだが?」 あっけに取られていた傭兵達は、その一言で我に返った。 「・・・先月まではね」 「でも、負けるようなやつぁ主人じゃねえや」 そう言って傭兵達はげらげらと笑う。口を半月に歪めて、仮面の男も笑った。 「金は言い値を払う だが俺は甘っちょろい王さまじゃない・・・逃げたら、殺す」 「ワルド・・・ちょっとペースが速くない?」 抱かれるような格好でワルドの前に跨るルイズが言う。ワルドがそうしてくれと言ったせいもあって、雑談を交わすうちにルイズの口調は昔の丁寧な言い方から今の口調に変わっていた。 「ギアッチョは疲れてるわ 馬に乗り慣れていないの」 その言葉にワルドは後方を見遣る。血走った眼で馬を駆るギアッチョの身体からは漆黒の怒気が漂っていた。今にも馬を絞め殺さんばかりの勢いである。 「・・・何やら怒っているようにしか見えないが」 「疲れた結果よ!あいつは怒りやすいんだから」 ふむ、と言ってワルドはその立派な口髭を片手でいじる。 「ラ・ロシェールの港町まで止まらずに行くつもりだったんだが・・・」 「何言ってるの、普通は馬で二日はかかる距離なのよ」 「へばったら置いていけばいいさ」 当然のように言うワルドに、「ダメよ!」とルイズが反論する。 「どうして?」 「使い魔を置いていくなんてメイジのすることじゃないわ それにギアッチョは凄く強いんだから!」 ワルドはそれを聞いてふっと笑う。 「やけに彼の肩を持つね・・・ひょっとして君の恋人なのかい?」 「なっ・・・!」 その言葉にルイズの顔が真っ赤に染まり、 「そそ、そんなわけないじゃない!ああもう、姫さまもあなたもどうしてそんなことを言うのかしら」 なんだか顔を見られるのが恥ずかしくなって、ルイズは綺麗な髪を揺らして俯いた。 「そうか、ならよかった 婚約者に恋人がいるなんて聞いたらショックで死んでしまうからね」 そう言いながらも、ワルドの顔は笑っている。 「こ、婚約なんて親が決めたことじゃない」 「おや?ルイズ、僕の小さなルイズ!君は僕のことが嫌いになったのかい?」 昔と同じおどけた口調でそういうワルドに、「もう小さくないもの」とルイズは頬をふくらませた。 「・・・ところで、彼はそんなに強いのかな?」 「勿論よ 私の自慢の使い魔なんだから! 詳しくは話せないけど・・・」 ワルドの質問に自慢げにそう答えるルイズを見て、ワルドは何かを考える顔をした。 疲労と怒りをこらえながら、ギアッチョは馬を駆る。朝からもう二回も馬を交換していた。 さっきからルイズが何回か心配そうにこちらを見ていたが、ギアッチョは休憩させてくれなどと言うつもりは微塵もない。 そんな情けないことはギアッチョのプライドが受け入れなかった。十四歳――とギアッチョは思っている――の子供にこんなことで心配されたという事実がその意地を更に強固にしている。 ――ナメんじゃねーぞヒゲ野郎・・・ついて行ってやろうじゃあねーか ええ?オイ 口から呼気と共に殺気を吐き出しながら、ギアッチョはそう呟いた。 このまま放っておけば自分に累が及びそうだったので、デルフリンガーは彼の怒りを逸らすべく口を開く。 「あ、あのですねーダンナ・・・」 「ああ!?」 「ヒィィすいません!」 熊も射殺さんばかりのギアッチョの眼光にデルフリンガーは一瞬で押し黙ったが、気持ち悪いから途中で止めるなというギアッチョのもっともな発言を受けて恐る恐る話題を再開した。 「い、いやー・・・ルイズの婚約者らしいッスねぇあのヒゲ男」 「そうだな」 「そ、そうだなって・・・なんかないんスか?結婚ですよ結婚」 ギアッチョの意識をなんとか婚姻の話題に持って行こうとしたデルフだったが、彼の「ああ?」という一言で全てを諦めた。 何度も馬を変えて昼夜を問わず飛ばし、ギアッチョ達はその日のうちに――といっても夜中だが――なんとかラ・ロシェールの入り口まで辿り着いた。 「・・・なんだァァ?ここのどこが港町なんだオイ?」 ギアッチョは周りを見渡して言う。四方八方を岩に囲まれた、まごうこと無き山道であった。 月明かりに照らされて、先のほうに岩を穿って作られた建物が立ち並んでいるのが見える。まだ走らせる気かと、いい加減ギアッチョの怒りが限界に達しつつあった。 「ああ、ダンナはしらねーのか アルビオンってのは」 と喋る魔剣が口を開いた瞬間、崖の上から彼ら目掛けて燃え盛る松明が次々と投げ込まれ、 「うおおッ!」 戦闘の訓練をされていないギアッチョの馬は、驚きの余り暴れ狂ってギアッチョを振り落とした。 よく耐えたと言うべきか。一昼夜を休み無く走らされた挙句に馬上から振り落とされて、ギアッチョの怒りは頂点に達した。 デルフリンガーを引っつかんで鞘から乱暴に抜き出し、崖上に姿を現した男達を猛禽のような眼で睨んで怒鳴る。 「一人残らず凍結して左から順にブチ割ってやるッ!!!ホワイト・アルバ――」 しかし彼の咆哮は予想だにしない咆哮からの攻撃で中断され、彼の口からは代わりにもがッ!!というくぐもった声が響いた。 「どういうつもりだクソガキッ!!」 己の口に押し当てられた手を引き剥がしてギアッチョが怒鳴る。ギアッチョに飛びついて彼の攻撃を中断させたのは、他でもない彼のご主人様であった。 「それはこっちのセリフよ!」 ギアッチョに負けじとルイズが怒鳴る。 「見たとこ夜盗か山賊の類じゃない!こんなところで堂々とスタンドをお披露目してどうするのよッ!」 「ンなこたぁもうどうでもいいんだよッ!!離れてろチビ!!一人残らずブッ殺してやらねーと気が済まねぇッ!!」 ブッ殺したなら使ってもいいッ!とペッシに説教しているプロシュートの姿が浮かんだが、ギアッチョはいっそ爽やかなほど自然にそれをスルーした。 「だっ、誰がチビよこのバカ眼鏡!あと1年もしたらもっともっと大きくなるんだから!」 どこが?と言いたかったデルフリンガーだったが、二人の剣幕に巻き込まれると五体満足では済みそうになかったので黙っておくことにする。 「とにかく!」とルイズは小声になって怒鳴る。 「ワルドはわたしの婚約者だけど、同時に王宮に仕えてるってことを忘れないでよ! そんなことしないとは思うけど・・・万が一王宮にあんたのスタンドのことがバレたらどうなるか分かったもんじゃないんだから!」 「そうなってもよォォォ~~~~ 全員凍らせて逃げりゃあいいだろうが!!キュルケだのタバサの国によォォォォ!とにかく邪魔するんじゃあねえ!!そこをどけッ!!」 「何無茶苦茶言ってるのよ!あんたの責任は私にも及んでくるんだからね!! 勝手な行動は許さないんだから!!」 再び大音量で怒鳴る二人を不思議そうな眼で眺めながら、ワルドは小型の竜巻で飛んでくる矢を弾き逸らす。そうしておいて、ワルドは攻撃の為の詠唱を始めた。 このままではワルドに全部持っていかれてしまうと気付き、ギアッチョはちょっとルイズを眠らせてしまおうかと考えたが―― ばさりというどこか覚えのある羽音が聞こえ、ギアッチョ達は上を見上げた。 直後男達の悲鳴が聞こえ、それと同時に彼らは次々に崖下に転落する。 「あれ・・・シルフィード!?」 ルイズ達の驚きにきゅいきゅいという声で答え、シルフィードとその上に乗った三人――キュルケとタバサ、それにギーシュが降りてきた。
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岩壁の間を走る道を、ギアッチョ達は「桟橋」へと急いでいた。迷うことなく 駆け行く彼らを、二つの月が煌々と照らしている。ギアッチョは前を走るルイズに 眼を遣った。さっきから何度も心配そうに後ろを振り返っている。売り言葉に 買い言葉で出ては来たものの、やはりキュルケ達が心配なのだろう。宿屋の 辺りから薄っすらと黒煙が上がっているとなれば尚更だ。 ついて来たのは彼女らの勝手だ。キュルケに聞こえるような場所で任務の ことを口走ってしまったことを責められればこちらの落ち度だったと言わざるを 得ないが、それでもついて来たのは彼女達の勝手だ。しかし、ならばあの場で 逃げ帰るのもまた彼女達の勝手だったはずだ。極秘の任務だと言われたから には、決して誰にもそれを明かさない覚悟がルイズにはある。だからキュルケ 達は結局何も知らなかったし、何も聞いてはいなかった。彼女達は遊び半分で ここまで来た。ただそれだけのはずだ。命を賭けてまで敵の足止めをする 理由も責任も、砂の一粒程もありはしないはずなのだ。 ――どうして・・・そこまでするのよ・・・! 「バカじゃないの!?」とルイズは怒鳴りたかった。今すぐ宿に引き返して、 あの三人を学院まで追い返したかった。 ――どうしてそこまでするのよ・・・! ルイズは我知らず繰り返す。彼女達と自分は、同じ学年でただ最近少し縁が あるというだけの関係だ。自分の為に命を張れるような関係であるはずがない。 彼女達と自分は、友達でも何でもないのだから。 そう考えて、ルイズの心はズキンと痛んだ。友達でも何でもないという、つい 数日前まで当たり前だった事実が彼女の心に突き刺さる。 その痛みに顔を歪めて、彼女はようやく自分の気持ちに気がついた。自分は 彼女達の輪に入りたかったのだと。彼女達と、笑い合いたかったのだと。 キュルケ達と楽しげに笑う自分の姿が一瞬脳裏をよぎり――それが彼女の 孤独を残酷なまでに浮き彫りにする。そんな自分がどうしようもなくみじめで 悲しくて、ルイズは唇を噛んでただ俯いた。 「おーい旦那ァ ちょいといいかね?」 ギアッチョの腰で、デルフリンガーがガチャガチャと音を立てる。 ギアッチョは先頭を走るワルドの背中に視線を合わせたまま、口だけで 「何だ」と返事をした。 「いやね、さっきの決闘でずーっと引っかかってたことがあったんだが そいつを今ようやく思い出してよ」 デルフリンガーはそこでギアッチョの反応を見るように言葉を切る。ギアッチョの 無言を先を続けろという意味に受け取って、デルフは言葉を継いだ。 「俺、どうやら魔法を吸収する能力があるみてーなんだわ」 軽い口調で告げられたそれに、ギアッチョはピクリと眉を上げる。 「・・・てめー、そりゃあかなり珍しい能力なんじゃあねーのか」 この世界には、魔法を利用して特殊な力を持たせたマジック・アイテムなるものが 氾濫している。しかし魔法を吸収するアイテムというものは、ギアッチョは寡聞に して知らない。そんなものがあれば貴族連中はこぞってそれを求めている だろう。少なくとも、あの土くれのフーケならば奪ってでも手に入れるはずだ。 先の戦いで、彼女がそれを使ったという話はない。ということは、そんなアイテムは この世に存在しないか――そうでなくとも相当な珍品である可能性が高い。 「へっへ ちったぁ見直したかい?旦那」 「・・・・・・まーな つーかよォォ~~、てめーは一体何なんだ?」 嫌々といった表情で返事をするギアッチョに人間で言う首をすくめるような動作を して、デルフリンガーは答える。 「いやー、実を言うとそこんところがちょいと曖昧でね 何千年も生きてりゃあ そりゃ記憶も風化するってなもんでよ」 何千年、という言葉にギアッチョはデルフに眼を落とす。彼の出自に興味が 沸いたが、しかしそれは直後後方から迫り来た足音と殺気に掻き消された。 ギアッチョはデルフリンガーに手をかけるとぐるんと背後を振り向き、そのまま 殺気を発した人物を確認もせずに魔剣を薙ぎ払った。 「――ッ!」 背後に迫っていた黒い影はまるで体重を感じさせない動作で斬撃を跳び避け、 そのままギアッチョの頭上を跳び越えてルイズに迫る。気配を感じてルイズが 振り向いた時には、彼女の身体は既に影に捕えられていた。 「きゃあッ!?な、何なのよ!」 ルイズの身体を片腕で乱暴に抱えて影は笑う。二つの月に照らされたその 顔を、白い仮面が覆っていた。 「ナメた真似してくれるじゃあねーか!」 そう吼えると共にギアッチョは先ほどの攻撃を巻き戻すような形で背後の 白仮面に斬りかかるが、 「・・・てめー」 デルフリンガーの切っ先は、ルイズの喉元一サントで停止した。 「ギアッチョ!」 ルイズが叫んだその瞬間、彼女を盾にした仮面の男が突き出した黒塗りの 杖によってギアッチョの身体は数メイルを吹っ飛んだ。 「チッ 野郎・・・」 前傾姿勢で着地したままウインド・ブレイクの風圧で尚も数十サントを 押し下げられ、ギアッチョは色をなくした眼で毒づいた。 「イル・フル・デラ・ソル・・・」 仮面の男はルイズの身体をきつく掴み、素早くルーンを唱える。一瞬の うちにフライの魔法を完成させ、仮面の男はこの場を離脱しようとするが、 背後の異変に気付いたワルドが既に彼に杖を向けていた。ワルドを 振り返った男が防御の姿勢を取るより早く、ルイズだけを見事に避けて 空気の槌が仮面の男を宙に打ち上げる。 「がはッ!」 「大丈夫かいルイズ!すまない、気付くのが遅れたよ」 ルイズに駆け寄って、ワルドは安心させるように彼女を抱きしめた。 レビテーションで何とか体勢を立て直した仮面の男にギアッチョが肉薄する。 「いけすかねぇ仮面を叩っ斬ってやるぜ てめーの顔面ごとよォォー!」 男に息つく暇も与えず唐竹割りにデルフリンガーを振り下ろす。どうやら かなり戦い慣れているらしい仮面の男は後ろに跳んであっさりそれを かわすが、ギアッチョは「ガンダールヴ」の力によって常人では有り得ない 速度で斬撃のラッシュを続ける。横薙ぎに首を狙い返す刀で袈裟に斬り下ろし、 心臓を狙って刺突を繰り出しそのまま回転してまた首を薙ぐ。太刀筋は 素人でもそれが全て急所を狙ってくるとなれば気を抜くわけにはいかない。 その上、ラッシュの折々に腹や顎等を狙って手や足が飛んで来る。 そっちのほうには多少の心得があると見えて、一瞬でも気を緩めれば そのまま真っ二つにされてしまいかねなかった。 仮面の男はチッと舌打ちする。手の内を見せてしまうことになるが、一気に 決めてしまわねば数十秒後に倒れ伏しているのは自分かも知れない。 ギアッチョの怒涛の連打の間隙を突いて杖を突き出し、バッと跳び上がって ウインド・ブレイクを放つ。今度は読んでいたようでギアッチョは一メイルほど 押されながらも吹き飛ばずに留まったが、仮面の男は逆に己の魔法の 反動を利用して四メイル程後ろに跳び退っていた。そしてそのまま間髪 入れず次の呪文を唱える。ギアッチョが駆け出す頃には既に仮面の男は その杖を振っていた。ギアッチョは男の周囲の空気がどんどん冷えていくの にも構わず突っ込むが、 「や、やべぇ!旦那!俺を突き出せッ!!」 魔法の正体に気付いたデルフが叫んだ瞬間、 バチィッ!! 激しい音と共に男の周囲の空気が爆ぜ――男の周囲とギアッチョを繋いで、 一筋の閃光が走った。 「ぐおあああああああッ!!」 左腕を中心に全身に雷撃を受け、左腕が燃え尽きたかのような痛みに ギアッチョは痛苦の声を抑え切れなかった。常人ならば気絶してもおかしくは ない痛みをなんとかこらえ、ふらつきながらも己のプライドを杖にして立ち続ける。 「ギアッチョ!!」 ワルドの腕をほどいてルイズがギアッチョに駆け寄る。ワルドは少し首をすくめて、 仮面の男に向き直った。猛獣のようにその身体をかがめると、一瞬にして男に 躍りかかる。ギアッチョに対抗するかの如く、ワルドは急所目掛けて己の杖で無数の 突きを繰り出した。防戦一方の仮面の男にフッと笑いかけると、決闘の時と同じく 前触れのないエア・ハンマーで敵を打ちのめす。 「ぐあッ・・・!」 肺から空気を吐き出して男は虚空を舞ったが、しかし吹っ飛んだことでワルドから 距離を取れたという事実に仮面の下の口はニヤリとつり上がった。既に詠唱を 完了していたフライを発動させ、彼は瞬く間に闇夜へ消え去った。 「ギアッチョ!大丈夫!?」 ギアッチョの身を案じるルイズを苦痛に歪む眼で一瞥して彼は口を開く。 「うるせーぞ・・・黙ってろ、声が頭に響く」 眩暈すら起こす痛みに右手で頭を押さえながら、ギアッチョは努めて平静な 口調でそう言った。 「で、でも・・・」 「とっとと向こうへ行きな・・・婚約者様が見てるぜ」 「行けるわけないじゃない!手当てをしないと・・・!」 ワルドはしばらくその場に佇んで彼らを見ていたが、ギアッチョから離れる様子の ないルイズに首を振って、やがて諦めたようにやって来た。 「ライトニング・クラウド・・・あの男、相当な術者のようだな しかし腕で済んでよかった 何故だか分からないが、君はかなり運がいい あれは本来ならば命を軽く奪う呪文のはずだよ」 「ふむ・・・ひょっとすると、この剣が電撃を和らげたのか?」 ワルドはあっさりと原因を看破するが、相棒の心を慮ってかデルフリンガーは 一言「知らん、忘れた」と答えた。 「インテリジェンスソードか?珍しい代物だな・・・」 「ワルド・・・そこまでにして ライトニング・クラウドの威力から考えれば運が よかったけど、これだって気絶しかねない大怪我だわ 手当てをしてあげて!」 嘆願するような声で言うルイズに、ワルドは困った顔を向ける。 「ルイズ・・・それは出来ない」 「どうして!?」 「いつ敵に追いつかれるか分かったものじゃない こんなところで悠長に治療を している暇はないんだ」 「そんな・・・!」 「そいつの言うことは正しい・・・先に進むぜ」 ワルドを説得しようとするルイズにストップをかけたのはギアッチョだった。 「この程度でくたばるほどヤワな人生は送っちゃいねー」 「でも・・・!」と食い下がるルイズから眼を離して、ギアッチョは先頭に立って歩き 始めた。ワルドは優しくルイズの髪を撫でて促す。 「さ、行こう 桟橋はすぐそこだ」 「・・・・・・分かったわ」 ギアッチョの背中に固い意思を見て、ルイズは渋々それを承諾した。 「・・・これが桟橋だと・・・?」 丘に作られた長い階段を登り切った果てに現れたものを眼にして、流石の ギアッチョも驚愕を隠せなかった。 それは山ほどもあろうかという大樹だった。視界に収まりきらない程の 巨大な幹から、無数の枝が四方八方に伸びている。その枝一つ取っても 普通の樹を何十本も束ね合わせたような大きさである。一体どれ程の 高さなのかは闇夜に溶けて伺えないが、天を衝くという言葉に相応しい 威容であろうことは容易に想像がついた。 ――まるでゲルマンの神話だな・・・ アスガルド・ミッドガルド・アールヴヘイム・・・幾層もの世界を貫きそびえる 神話の大樹の末端がこれだと言われれば、今のギアッチョはあっさり 信じたかもしれない。それ程までに巨大な老樹であった。 ギアッチョはその枝に吊るされた船に眼を向ける。上空高く浮かんでいる それを見た感想は、「メローネにホルマジオ辺りがやってるゲームに あんなのあったな」だった。船に乗るのに丘の上へ登る時点で薄っすらと 予想がついていた上にこんな壮大な樹を見せられた後である。どうでも いいとまではいかないが、全く驚く気にはなれなかった。 しかしあれに乗るとなると興味は沸いてくる。 「空飛ぶ船に乗るのは初めてだな」 と呟くギアッチョに、彼を心配して隣についていたルイズが不思議な顔をする。 「ギアッチョの世界にもあるんでしょ?空飛ぶ船・・・ええと、ひこうきだっけ」 「船の形と原理じゃ空は飛べねー 船と飛行機は全く別の代物だ」 「へぇ・・・」 わたしもいつか乗ってみたいと言いかけて、ルイズは慌てて口をつぐんだ。 ギアッチョの郷愁を無意味に呼び起こすべきじゃないと心中すぐにそう 考えたが、それが自分への言い訳であることは痛い程解っていた。 結論を出されたくないだけなのだ、自分は。イタリアへ帰るという結論を 出されることを激しく恐れている自分を、ルイズは否定出来なかった。 ギアッチョをイタリアへ送り返す方法は、未だに探している。しかし本を 一冊調べ終える度に落胆と共に彼女に生じる感情は、もはや疑念の 余地もなく「安堵」であった。ギアッチョを帰らせてやりたいという気持ちと 自分の使い魔でいて欲しいという気持ち、二つの感情がせめぎあって ルイズはもうどうにも動けなくなってしまいそうだった。そんな時に一瞬 いっそ一緒にイタリアへ行けないだろうか等と考えてしまい、少女の 悩みは更に混迷を増してしまった。 ルイズはぶんぶんと首を振る。考えるな。何も考えなければ、悩むことも ない。ルイズはそうして、無理に己を抑えつける。 「ルイズ?大丈夫かい?」 己の感情と躍起になって戦っていたルイズは、ワルドの声で我に返った。 「えっ、あ・・・ごめんなさい 何?ワルド」 ワルドは苦笑して言い直す。 「今偵察を終えて来たんだがね どうやら敵はまだ近くには来ていないらしい それで、僕は先に行って船長と交渉してこようと思う 使い魔君はその怪我 では満足に走れないだろうからね」 その提案にルイズが頷くと、ワルドは大樹の根元に作られた空洞へと 走って行った。ギアッチョは不服そうに舌打ちする。 「余計な真似しやがって・・・走るぐらいいくらでも出来るっつーんだよ」 「気遣ってくれたんだから正直に受け取りなさいよ」 そう言ってルイズはギアッチョの前に出た。 「ほら、階段を登るわよ 暗いんだから落っこちないでよね」 ギアッチョは不機嫌そうな顔をルイズに向けると、溜息をついて歩き出した。 空洞の中には幾つもの階段が並んでいた。それぞれが異なる枝に通じて いるらしく、一つ一つに違った文字の書かれたプレートが貼られている。 それらを物珍しげに眺めながら、ギアッチョはルイズに続いて階段を 登り始めた。上を見上げてみるが、階段の終わりは勿論見えない。 前を行くルイズに、ギアッチョは時間潰しに問い掛けた。 「すっかり忘れてたがよォォ~~ おめーあの時何を言うつもりだったんだ?」 ギアッチョからは見えなかったが、その言葉にルイズの顔は真っ赤に茹で 上がった。先の騒動で、バルコニーでのことなどルイズはすっかり忘れて いたのだった。しかも、冷静に考えてみれば自分はあの時一体どうする つもりだったのだろうか。よりにもよってギアッチョに一体何を言おうと したのかと考えて、ルイズの頭は爆発しそうに熱くなった。 「・・・ああ?どうかしたのかオイ」 いきなり動きがギクシャクし始めたルイズに、ギアッチョは怪訝そうに 声を掛ける。 「なっ、ななな何でもないわよ!あ、あああれは一時の気の迷いというか・・・ と、とにかく何でもないんだから!」 ルイズはしどろもどろで否定するが、何でもなくないのは明白だった。 しかしギアッチョは、「そうか」と言ったきり何も聞こうとはしない。ルイズが 焦るとどもるということはギアッチョも知っているので、まぁ聞かれたく ないなら別にいいと考えたのだった。 それっきり二人して黙り込み、気まずい空気の中を彼女達は上へ上へと 登り続ける。ようやく階段に終わりが見え始めた頃、ルイズはぽつりと言った。 「・・・ねぇ ギアッチョは、してないのよね・・・結婚」 ギアッチョに問われて、ルイズは結婚の話を思い出していたらしい。 ルイズの言葉に、ギアッチョは呆れたように答える。 「オレが結婚するよーな年齢に見えるってェのか?ええ?オイ」 「・・・貴族の間じゃわたしぐらいの歳で結婚することは珍しくないわ」 ルイズは当たり前のように答えるが、しかしその口調にはどこか悲しげな 響きが含まれていた。 要するに結婚したくないということなのだろうか?それならワルドにはっきり そう言えばいいではないか。ギアッチョはそんな疑問ををそのままルイズに ぶつけるが、ルイズはふるふると首を振って前を向いたままそれに答える。 「そんなこと父さまも母さまも許すわけがないわ」 王族に連なる血統を持つヴァリエール家は、それが故に厳格この上ない 教育方針を敷いていた。 「ワルドとの結婚は父さまが決めたことなの 他の人と結婚するなんて 言ったら、わたしは勘当されたって文句は言えないわ」 「・・・つまりこういうことか?俺が奴を暗殺――」 「ダ、ダメに決まってるでしょバカッ!」 チッと舌打ちするギアッチョにばっと向き直って、ルイズは眼をつり上げる。 「暗殺とかそういうのはダメだって言ってるでしょ!? いい?この世界にいる限りあんたはわたしの使い魔なんだからね! 勝手に殺したり奪ったりするのは絶っ対に禁止!分かった!?」 「細かいことを気にするヤローだな」 「細かくないっ!」 大声でまくしたてて、ルイズははぁはぁと肩で息をする。それからはっと 何かを思いついたような顔になって、彼女はギアッチョに背中を向けた。 「あ、ああ後一つ忘れてたわ!この世界にいる限り、わたしを置いて どど、どこかに行くなんて許さないんだからね!」 早口にそれだけ言うと、ルイズはギアッチョを置いて階段を駆け上がって 行ってしまった。 「・・・どこかに行くなってよォォー 自分でどっか行っちまったじゃあねーか 全くガキの言うことはわからねーな ええ?オンボロ」 「・・・・・・・・・いや・・・」 がしがしと頭を掻いてルイズが走って行った出口を見つめてそう言う ギアッチョに、デルフはどう答えていいものかついに思いつかなかった。
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木造の粗末なベッドに椅子とテーブルが一組、他に眼に付くものは壁に掛けられたタペストリーのみ。その質素な部屋が、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーの居室であった。 部屋の主は椅子に腰掛けると、机の抽斗を開いた。そこにはたった一つ、宝石が散りばめられた小箱が入っている。先端に小さな鍵の付いたネックレスを首から外すと、彼はそれを小箱の鍵穴に差し込んだ。 開いた蓋の内側には、アンリエッタの肖像が描かれている。 ルイズとワルド、それにギアッチョがその箱を覗き込んでいることに気付いて、ウェールズははにかむように笑った。 「宝箱でね」 小箱の中に入っていた手紙を、ウェールズはそっと取り出す。それこそがアンリエッタの手紙であるらしかった。愛しそうに手紙に口づけた後、ウェールズは便箋を引き出してゆっくりと読み始める。 何度もそうやって読まれたらしいそれは、既にボロボロだった。 「これが姫から頂いた手紙だ」 ウェールズはゆっくりと手紙を読み返すと、ルイズにそれを手渡して 「確かに返却したよ」と言った。深く頭を下げて、ルイズは手紙を押し頂く。 「ありがとうございます、殿下」 「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル』号がここを出港する。 それに乗って、トリステインに帰るといい」 しかしウェールズから告げられた任務終了の言葉にも、ルイズは安堵の顔を見せない。それどころか、彼女の表情は悲しげにすら見える。 少しの間彼女はじっと手紙を見詰めていたが、やがて決心したように口を開いた。 「……あの、殿下 申し上げにくいのですが……その」 「言ってごらん」 「……王軍に勝ち目は、ないのでしょうか」 躊躇うように問うルイズに、ウェールズはあっさり答える。 「ああ、ないよ」 「我が軍は総勢三百、敵は五万だ 万に一つの可能性も有り得ないさ 我々に出来ることは、王家の誇りを最期の一瞬まで彼奴らに刻み込むこと――それだけだ」 幾分おどけたような口調でそう言うウェールズの眼に、しかし冗談の色は含まれていなかった。ルイズは俯いて口を開く。 「……殿下も、討ち死になさるおつもりなのですか?」 「当然さ 私は真っ先に死ぬつもりだよ」 愕然とした顔をするルイズの横で、ワルドはただ黙って眼を閉じている。 そしてギアッチョもまた、黙してウェールズを見つめていた。しかし眼鏡のレンズに阻まれて、彼の表情を読み取ることは出来ない。 「……殿下、失礼をお許しくださいませ 恐れながら、申し上げたいことが ございます」 「なんだね?」 「この、只今お預かりした手紙の内容 これは――」 「ルイズ」 ワルドがルイズの肩をそっと掴んでたしなめる。しかしルイズは、キッと顔を上げてウェールズを見つめた。 「わたくしがこの任務を仰せつかった折の姫様の御様子、尋常なものでは ございませんでした まるで……まるで恋人を案じるような…… それに先ほどの小箱に描かれた姫様の肖像画や、姫様のお話をなされる時の殿下の物憂げなお顔……もしや、姫様と殿下は――」 「恋仲であった、と言いたいのかな」 微笑むウェールズに、ルイズは頷いた。 「……とんだご無礼をお許しくださいませ しかし、そうであるならばこの 手紙の内容は……」 「……そう、恋文だよ ゲルマニアにこれが渡っては不味いというのは、つまりそういうことさ 何せ、彼女は始祖ブリミルの名において永久の愛を私に誓ってしまっているのだからね これが白日に晒されれば、無論ゲルマニアとの同盟は相成らぬ トリステインはただ一国にて、貴族派共と杖を交えねばならなくなるだろう」 「……殿下、僭越ながらお願い申し上げます どうか、我が国へ亡命なされませ!」 ルイズは今にも叫びだしそうな勢いで言うが、ウェールズは笑って取り合わない。 「それは出来ないよ」 「殿下、姫様のことを愛しておられるのならば、どうか、どうかお聞き入れ下さいませ!幼少のみぎり、わたくしは畏れ多くも姫様のお遊び相手を務めさせていただきました 姫様のご気性、わたくしはよく存じております!王宮の中にあって、姫様はとても純粋な方でございます 殿下の戦死を、あの方はきっと納得出来ませぬ。 先にお渡しした手紙にも、姫様は恐らくあなた様に亡命をお勧めになっているのでございましょう?いえ、わたくしには分かりますわ。亡命を受け入れず叛徒の手にかかって死んでしまわれたなどと、わたくしは一体どのような顔で姫様にお伝えすればよいのでしょうかそんなことを聞けば、姫様のお心はきっと張り裂けてしまいますわ! 殿下、お願いでございます!姫様の為に、どうか、どうか我が国へ!」 ルイズの心からの嘆願に、ウェールズは一瞬苦しげな顔を見せたが、しかしすぐに首を振ってそれを打ち消した。 「……本当に、君は彼女のことをよく知っているようだね そうさ、その通りだ。この手紙の末尾には私の亡命を勧める一文がしたためられている。……だが、私は亡命するわけにはいかない。絶対にだ」 「何故……!」 「私がトリステインへ亡命などすれば、叛徒共はそれを口実にすぐトリステインへ攻め込んで来るさ。奴ら――『レコンキスタ』の目的はハルケギニアの統一と『聖地』の奪還だそうだ まさか出来るなどとは思わないが。 それに私がここで逃げなどすれば、我がアルビオン王家の為に命を投げ打ってくれる三百人に一体どう詫びればいい? 我々はせめて最期の一瞬まで勇猛に戦って、ハルケギニアの王家は決して劣弱などではないことを知らしめなければならぬ それが、没する王家の最期の義務であり責任なのだ」 「……殿下……!」 「もうやめるんだルイズ 君の気持ちは殿下にも痛い程伝わっているさ だが殿下のお覚悟も理解しなければいけないよ」 そう言ってワルドはルイズの肩を抱く。彼女はそれでようやく諦めたようだった。悄然として俯くルイズの頭を優しげに撫でて、ウェールズは口を開く。 「君は正直な女の子だな、ラ・ヴァリエール嬢 正直で、まっすぐだ とてもいい眼をしている」 にこりと魅力的に微笑んで、ウェールズはルイズの眼を覗き込んだ。 「そのように正直では、大使は務まらないよ しっかりしなさい ……しかし、亡国への大使としては適任かも知れないな 明日に滅ぶ政府は、誰より正直だからね 名誉と矜持、これ以外に守るものなど何もないのだから」 そう言って、彼は己の顔を隠すように机の上に眼を落とした。そこには水の張られた盆が置かれている。水に浮かんでいる針は、微動だにせず一点を指していた。どうやら、これが時計であるらしい。 「……そろそろパーティーの時間だな。君達は我が王国最後の客人だ。是非とも出席していただきたい」 やがて上げられた彼の顔に、物憂げな様子は見られなかった。 ルイズはそれに応えるように、出来る限りの笑顔を作って一礼する。 「……ありがとうございます 喜んで出席させていただきますわ」 「光栄至極に存じます」 同じく一礼すると、ワルドは先頭に立って部屋を退出した。後に続こうとして、ルイズはギアッチョに顔を向ける。 「ほら、ギアッチョ行くわよ」 「先に行ってろ オレはまだ用がある」 「……は?ちょっ、何言ってるのよ!」 ルイズは焦ったような声を上げる。ギアッチョを一人にすれば一体どんな事態になるか解らない。しかしウェールズは微笑んでルイズを制した。 「私は構わないよ ラ・ヴァリエール嬢、先に行っていなさい」 ルイズは困ったように二人を見比べていたが、ギアッチョの眼に退かない光を感じて、諦めたように首を振った。 「変なことしたら許さないんだからね!」と何度も怒鳴るように念押しして、それでもどこか心配そうな顔をしながらルイズは退出した。 ぱたんと扉が閉まるのを確認して、ギアッチョはウェールズに視線を移す。何を言うでもなく、頭をがしがしと掻いてギアッチョはただウェールズを見つめて――否、観察している。 ウェールズもまた、ギアッチョを眺めて彼の言葉を待ったが、ギアッチョはなかなか用件を言い出そうとしない。少し困ったような顔をして、ウェールズはギアッチョに話しかけた。 「……人の使い魔とは珍しい トリステインとは変わった国であるようだね」 「…………トリステインでも珍しいらしいがな」 ギアッチョのぶっきらぼうな口調にウェールズは驚いたような顔になるが、それも一瞬のことだった。すぐにいつもの顔に戻ると、ウェールズはギアッチョに問い掛ける。 「……それで、私に一体何の用かな?子爵と同じ用件だとは思えないが」 それを聞いて、ギアッチョはずいとウェールズの前に進み出た。 ウェールズの蒼い瞳を覗き込むと、彼はようやく話を始めた。 「最初に言っとくが……オレは遥か彼方の世界から来た トリステインやアルビオンの礼儀作法なんざ知らねーし、迂遠な会話で曖昧に濁すつもりもねえ。答えてもらうぜウェールズ・テューダー はっきりとよォォ」 鬼のような眼差しでウェールズを睨んで、ギアッチョは続ける。 「てめーは何の為に死ぬ?聞けば敵は五万だそうじゃあねーか こんなもんは戦争じゃあねえ 一方的な虐殺だろうが」 ギアッチョの言葉に、ウェールズの顔はもう驚愕も不快も表さなかった。 「確かにその通りだ 恐らくは――いや、明日は確実にそうなることだろうね 何の為にか……理由は一つではないが、先ほども言った通り我々は最後まで戦って王家の誇りを示さねばならぬ 奴らの目的が現実のものとなってしまわぬようにだ」 ウェールズはうろたえることなく言い放った。 ウェールズの言葉を、ギアッチョはハッと鼻で笑い飛ばす。 「馬鹿も休み休み言えよ王子様。てめーは使命感に酔ってるだけだ。 誇りを示す?てめーらが総員討ち死にしたところで何も変わりゃあしねーぜ。 それとも何か?この世界にゃあ五万に三百で立ち向かって玉砕した人間を『間抜け』と思わない奴らが山ほど居るってわけか?」 「ああ、それも確かに君の言う通りかも知れないさ。だが我らの意志を誰か一人でも受け継いでくれる可能性があるのならば、私達はどうしてそれに賭けずにいられようか! 遥か異郷から来たという君には分からないかもしれないが、奴ら貴族派――『レコンキスタ』が本当に『聖地』奪還などに動き出せば、数限りない死者が出る。 それを阻止する為には、我々王家は決して奴らに屈してはならないんだ」 ウェールズの毅然とした反論を聞いて、ギアッチョは苛だった顔を見せる。 「……下らねぇな それなら他にいくらでもやりようはあるだろうが。てめーらは自分の国が裏切り者に渡るのを見ずに死にてーだけじゃあねーのか?ええ?オイ。 戦争って名を借りて自殺するってェわけだ。自尊心も満たせりゃ誇りも示せるからなァァァ」 「それは違うッ!!」 ウェールズはついに怒鳴った。握り締めた拳はぶるぶると震えている。 「我々の覚悟を侮辱しないでもらおう!我々はただ死ぬ為に死ぬのではない……死にに行くのでもない!希望を明日へと繋ぐ為に、『戦いに』行くのだ!!」 ドガンッ!! 「ぐッ……!」 壁を殴るような音が、部屋中に響き渡った。ウェールズは首根っこを掴まれて、他ならぬギアッチョの手によって壁に叩きつけられていた。 ウェールズを壁に押し付けたまま、ギアッチョは静かに口を開く。 「そんなに死にてーならよォォォーー 今ここで死ね」 ビキビキと音を立てて、ウェールズの首が凍り始める。ウェールズは驚愕に眼を見開いて呻いた。 「……な……んだ……これは…………!」 「動くんじゃあねーぜ王子様 そうすりゃあ楽に死ねるからよォォー」 「ッ……君は……何者なんだ……」 肺腑から細く息を吐き出すウェールズを死神も震え上がらんばかりの凶眼で見つめて、ギアッチョはつまらなさそうに口を開く。 「さてな……魔人だと言ったらてめーは信じるか?」 「何……?」 「だがオレは慈悲深い てめーを送った後はお仲間もしっかりそっちに届けてやるぜ この城を丸ごと氷の棺にでもしてな……」 それを聞いた途端、ウェールズの右手が跳ねるように動いた。一瞬で懐から杖を引き抜くと、素早く呪文を唱えてギアッチョに空気の塊を打ち放った。 「チッ……!」 今度はギアッチョが壁に叩きつけられる番だった。ギアッチョを引き離したことを確認して、ウェールズはぜいぜいと肩で息をしながらも油断なく杖を構える。 「ふざけるな……!私達は何としてでも明日まで生き延びるッ! それを阻むと言うのであれば、ギアッチョ!例えラ・ヴァリエール嬢の使い魔であろうと私は君を容赦しない!」 言うが早いかウェールズは立て続けに呪文を詠唱する。ギアッチョが弾かれたようにウェールズへ走り出すのと、ウェールズの呪文が完成するのは同時だった。ウェールズの杖から突如巻き起こった烈風は三枚の不可視の刃となってギアッチョに襲い掛かるが、 「ホワイト・アルバム!」 ギアッチョを切断するかと思われた瞬間、三つの刃は小さな銀の粉塵と化して砕け消えた。 「なッ――!?」 驚愕の声を上げるウェールズに、ギアッチョは寸毫待たず肉薄する。 ギアッチョはそのまま左の裏拳でウェールズの杖を殴り飛ばす。同時に右手でウェールズの頭を容赦なく掴むと、 ドグシャアァアッ!! 思いっきり床に叩きつけた。 「が……ッ!!」 「終わりだ」 機械的にギアッチョはそう宣告するが、 「うぉぉおおぉおッ!!」 ウェールズは諦めなかった。両の拳でもがきながらギアッチョに殴りかかり、何とか彼から逃れようとする。しかし所詮はメイジの細腕、百戦錬磨のギアッチョに敵う道理などあろうはずもなかった。 「……ぐッ……くそッ……!離れろッ……!!」 片手で拳を捌かれ続けても、彼は諦めない。荒い呼吸を繰り返しながらも攻撃を止めないウェールズを感情の読めない眼で見遣って、ギアッチョはパッと、攻撃を防いでいた左手を上げた。 バギャアア!! 「……ッ」 「なッ!?」 ギアッチョはウェールズの拳をモロに顔面で喰らい――否、受け止めた。いくら疲弊したメイジの拳とはいえ、思いっきり顔に受ければかなりのダメージがあるはずだった。しかしギアッチョは痛がる素振り一つ見せずにウェールズを睨む。次いで頭を掴んでいた右手を離すと、彼は両手を上げて立ち上がった。 「……やれやれ、悪かったな王子様よォォ オレの負けだ」 「……何だって……?」 ウェールズは魂が抜け落ちたような顔で言う。彼を引き起こしながら、ギアッチョはがしがしと頭を掻いた。 「とっとと諦めるか……さもなきゃあ命乞いでもするかと思ったんだがな。 てめーの『覚悟』は本物だったらしい 疑って悪かった……っつーところだ」 「……演技だったってわけかい……」 ウェールズははぁと溜息をついて椅子に滑り落ちた。 「そういうわけだ オレは慈悲深くも何ともねーからな。そんなに死にてーなら好き放題に死ね」 その言葉にウェールズはぽかんとしていたが、やがて堰を切ったように笑い出した。 「あっははははははは!そんな言葉を言われて安心したのは生まれて初めてだよ! 全くラ・ヴァリエール嬢は珍しい使い魔を召喚したものだ!」 おかしくてたまらないという風に笑い転げるウェールズに背を向けて、ギアッチョは扉へと歩き出す。 「話はこれだけだ ……あの姫さんにゃあオレからよろしく言っといて やるぜ」 そう言って扉に手を掛けたギアッチョに、後ろから「待ちたまえ」という声が掛かる。肩越しに振り向くと、笑いを収めたウェールズがギアッチョを見つめていた。 「……ならば私からも、一つ質問させてもらおう」 「……何だ」 「外つ国の住人である君は、何故私にこんなことをする?君が我らを気にかける理由がどこにあるのか、差し支えなければ教えて欲しいのだが」 ギアッチョは何も答えず扉に顔を戻す。その格好のまま、数瞬の沈黙を越えて彼は口を開いた。 「『覚悟』のねー野郎がさも世を悟り切ったかのような顔で生きてやがるのが気に食わねーからだ」 ウェールズは何も言わずにギアッチョを見つめ続ける。 まるでそんな答えには納得しないと言うかのように。 部屋を再び沈黙が包み――観念したのか、ギアッチョは溜息をついて頭を掻いた。 「…………と、思ってたんだがな……」 感化されたのかもしれねーな、と彼は独白するように言う。 「……感化?あの優しい少女にかい?」 「…………そうかもな あの真っ直ぐ過ぎるクソガキ――いや、クソガキ共か…… 全くオレもヤキが回ったもんだ」 不満げに舌打ちするギアッチョの後姿を眺めて、ウェールズは微笑む。彼は落ち着き払った仕草ですっと立ち上がると、顔を背けたままのギアッチョに近づいた。 「……私は君という人間をよく知らない ましてや、昔の君のことなど全く分からない……しかし言わせて欲しい」 ウェールズにとって、ギアッチョは彼の「覚悟」を今、恐らく最も曇りなく理解している人間だった。 ウェールズは微笑んだまま、太陽のような、しかしその中に峻厳たる誠実さを含んだ口調で言った。 「……今の君に、ありがとうと」 ギアッチョはフンと鼻を鳴らすと、乱暴に扉を開けながら返す。 「とんだお人よしだな……てめーはよ」 その言葉と共に、ギアッチョは廊下へ歩き去った。 前へ 戻る 次へ
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間章 貴族、平民、そして使い魔 塗りつぶしたような王都トリスタニアの闇空に、青い絵具が一滴こぼれた。 王宮へと近づくにつれて、どんどん大きく形を変えてゆく。やがて 夜目にも分かる程鮮やかに竜の姿を取った時、それはぶわりと中庭へ 降り立った。 突然の闖入者に、宮廷内は騒然となった。王宮警護の当直である 魔法衛士のマンティコア隊員達が、次々と駆けつけては風竜を取り囲む。 「ね、ねえ君・・・これは流石に、目立ちすぎなんじゃ・・・・」 竜の背から飛び降りながら不安げに呟く金髪の少年に、 「一刻を争う事態なんでしょう?お上品にやってる場合じゃないじゃない」 すました顔で赤毛の少女。彼女の後から眼鏡をかけた少女が、そして 同時に剣呑な空気を纏った男が降り立つ。最後にひらりと飛び降りて、 桃色の髪の少女は大きく名乗りを上げた。 「わたしはラ・ヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズです アンリエッタ姫殿下に取次ぎ願いたいわ」 「ああ、ルイズ・・・!あなた達!無事に帰って来たのですね!」 何故かヴァリエールの名を恐れたマンティコア隊の隊士達によって、 ルイズ達はあっさり謁見の運びとなった。キュルケ達三名を待合室に 残し、ルイズとギアッチョはアンリエッタの居室で対面する。 「姫さま・・・」 二人はひしと抱き合った。そうしてから、ルイズは旅の顛末を説明 してゆく。キュルケ達との合流、陸と空の賊の襲撃、ウェールズとの 邂逅・・・・・・。 「・・・そう、ですか・・・」 全てを聞き終えて、アンリエッタはぽつりと呟いた。 「・・・やはり 殉じられたのですね・・・ウェールズ様は・・・」 「・・・あ、あの 姫様・・・その、ウェールズ様のことは」 「まさか魔法衛士隊に裏切り者がいるとは・・・護衛達のことは 新たに考え直す必要があるかも知れませんね」 「姫様・・・?」 「この手紙とレコンキスタの情報、確かに受け取りました ルイズ、 本当にありがとう よくぞ我がトリステインを救ってくれました」 「・・・・・・いえ、滅相もございません」 ルイズは胸が痛んだ。アンリエッタは今必死に王女として、 政を司る者として振舞おうとしているのだ。ならば、ルイズが その意志を汲まないわけにはいかなかった。アンリエッタの ように、ルイズもまた務めて無機質に言葉を重ねる。 一通り事務的なやり取りを終えた後、アンリエッタはその表情を 少し柔らかくした。 「あの者・・・ワルドとは、杖を交えたのですか?」 「・・・ええ お陰でこの通り、皆傷だらけですわ」 ルイズは軽口を叩いてみせる。その程度には、心の傷も癒えた らしい。それが分かったようで、アンリエッタもくすりと 笑って言葉を継ぐ。 「重傷を負った者はいないのでしょう?あのワルドをその程度の 代償で退けるとは、あなたのお友達は皆頼もしいのですね」 「・・・はい 自慢の友人達ですから」 花のような笑みで、ルイズはそう答えた。 「それに・・・言いましたでしょう?彼がいれば、どんな任務も きっと達成して御覧にいれますと」 アンリエッタはルイズの後ろに控える男を見る。 「ふふ・・・とても信頼されているのですね、使い魔さん もう一度言わせていただきますわ・・・ありがとうございます」 「やるべきことをしただけだ」 どうでもよさげに、彼は答えた。 「それでも、ですわ 本当に、今回は申し訳ありませんでした まさかあの謹厳実直な男が裏切るなど、夢にも思わなかったのです」 謝意を表すアンリエッタを、ルイズが慌てて止める。 「姫様、とんでもないことでございます・・・!恐れながら、 彼の心は幼少より付き合ってきたこのわたくしにも看破すること 能いませんでした 如何な人物であろうとも、あの者の秘めたる 牙を見抜くことは出来なかったと存じます」 少々大げさだが、ルイズの心は伝わったようだった。静かに 立ち上がって、アンリエッタはくすりと笑う。 「そうですね・・・そうかも知れません さて、此度は重ね重ね 感謝しますわ ゆっくりと身体を休めなさいな オールド・オスマンに 言えば休みもいただけるでしょう」 「もったいないお言葉です」 頷いてから、アンリエッタはギアッチョに向き直った。 「わたくしの大切な友達を・・・頼もしい使い魔さん、どうか これからも守ってあげてくださいな」 そう来るとは思わなかったらしい。刹那の沈黙の後、ギアッチョは ちらりとルイズの後姿に眼を遣る。躊躇いがちに頭を掻いて、 「・・・まあ、な」 彼は短く、そう返した。 「・・・成る程 放蕩三昧たぁいかねーわけか」 待合室へと足を向けながら、ギアッチョは一人ごちる。並んで 歩くルイズがそれに言葉を返した。 「そりゃ、地位が高ければ高い程責任は増すものでしょう?」 「ノブレス・オブリージュってやつか 姫さんと言やぁ 好き放題に遊んで暮らしてるようなイメージしかなかったからな」 「・・・イタリアには、王室はないの?」 「ねーな 五十年程前に廃止されたらしいが、よくは知らねぇ」 「・・・廃止・・・?」 王室の廃止など、トリステインの人間にはさっぱり理解出来ない 話だろう。少し考えてみたが、ルイズにもやはり解らなかった。 そのままどちらともなく会話が途切れ・・・二人の間に聞こえる ものは、かつかつと響く靴の音だけ。 やがて沈黙を打ち破って、ルイズが呟くように口にした。 「・・・ねえ さ、さっきのこと・・・本音だったの?」 「ああ?」 何の話か分からずに、ギアッチョは怪訝な顔をする。 「や、だ・・・だから・・・わ、わたしを守ってくれるって・・・」 正確には曖昧に答えを返していただけだったが、ルイズには それがどうにも嬉しかった。そこで、ギアッチョ本人の口から もう一度ちゃんと聞きたかったのだが、 「・・・さてな」 眼鏡を弄りながら、ギアッチョは適当に返事をするだけだった。 「ちゃ、ちゃんと答えなさいよ!もう!」 「まーまールイズ こう見えても旦那はおくゆかしいんだって たとえ死んでもおめーを守り通そうと思っていても、口にゃあ 中々出せないお人柄なのさ いやぁ旦那にも可愛いとこr」 べらべらと喋るデルフリンガーの声にビキビキという音が重なり、 それきり魔剣は完全に沈黙した。「まぁ、それなら確かに 可愛いんだけど」などと思いつつ、ルイズはそれ以上の問答を 止める。ギアッチョの表情は、相変わらず読み取れなかった。 「遅いわよー、ルイズ!」 正体無くソファに背中を預けていたキュルケが言う。 待合室で雑談に興じていた三人は、その言葉を合図に席を 立った。 「お待たせ 本当、遅くなっちゃったわね」 テーブルの上に置かれた水盆に浮かぶ針に眼を遣って、 ルイズはそう答える。時刻は深夜に差し掛かろうとしていた。 中庭へ向かいながら、ギーシュが問い掛ける。 「報告はもう済んだのかい?」 「ええ ・・・詳しくは言えないけど、任務は成功よ あんた達のお陰だわ・・・本当にありがとう」 「何言ってんのよ 覚悟してなさいよ?私達が困った時は、 あなたに助けてもらうんだから」 冗談めかして返すキュルケに、 「と、当然でしょ!今に見てなさいよ!」 とルイズが答える。それを聞いて、ギーシュが笑った。 「アッハッハ ルイズ、喧嘩じゃないんだからさ!しかし 長い旅だったね・・・早くモンモランシーに会いたいよ」 「あら、あなたまだ続いてたの?」 「意外」 本に眼を落としながら、タバサはぽつりと呟いた。 「さらりと失礼な・・・僕達の愛は永遠、そして無限なのさ」 「女と見れば口説きに走る男の言うことじゃないわね」 「あんたが言うことでもないと思うけど」 他愛のないことを喋りながら、ルイズ達はシルフィードの 待つ中庭へ到着する。哨戒を続けているマンティコア隊の 隊士に一礼して、彼女達は空へと飛び立った。 居室の窓辺に立って、アンリエッタは飛び去るシルフィードを 物憂げに眺めた。彼女の右腕であり、実質的なトリステインの 首脳でもあるマザリーニ枢機卿に種々の報告と相談、指示を終え、 アンリエッタはようやく一人の少女に戻ることが出来た。 誰も入れないように命じたその部屋で、彼女は力なくソファに 座り込む。 ゆっくりと右手を開くと、そこには美しく輝く風のルビー。 その深い光を見つめながら、アンリエッタは先刻を思い返した。 この部屋を辞する間際にルイズがアンリエッタに差し出したもの、 それが風と水、二つのルビーだった。 片割れである水のルビーは、褒賞としてルイズに下賜した。 文字通り命を賭けた彼女の働きには、それでも足りない程だと アンリエッタは思っている。――そして、風のルビー。 ウェールズの、それは唯一つの形見だった。ルイズは、 ウェールズは勇猛に戦い、そして散ったと言う。最後に一言、 アンリエッタの幸せを願って逝ったとも。 ルビーを両手で握り締め、俯いた額に強く押し当てる。恋人との 思い出が、アンリエッタの心を無数に駆け巡っていた。 「・・・あなたのいないこの世界の、一体どこに幸せがあると 言うのですか・・・・・・?」 万感の悲哀を込めて、アンリエッタはそう呟く。その声はか細く 震えていた。 「・・・・・・ぅ・・・」 耐え切れなかった。押し込めていた悲嘆が、こらえていた涙が、 堰を切って溢れ出す。 「・・う・・・ぅ・・・ううぅうぅぅうぅ・・・・・・ッ! ウェールズさまぁああぁぁ・・・・・・・!!」 誰も踏み入ることの出来ない部屋で一人、少女はいつまでも 泣き続けた。 前へ 戻る 次へ
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登録日:2022/09/08 (木曜日) 12 03 00 更新日:2024/05/22 Wed 23 26 24NEW! 所要時間:約 10 分で読めます ▽タグ一覧 おっぱい おてんば アンリエッタ アンリエッタ・ド・トリステイン ゼロの使い魔 ルイズ最大のライバル 作者のお気に入り 姫 川澄綾子 巨乳 幼馴染 水属性 王女→女王 紫髪 あなたはいいわね。”恋”だけに生きられて ヤマグチノボル氏のライトノベル『ゼロの使い魔』のヒロインの一人。 CV 川澄綾子 【概要】 フルネームはアンリエッタ・ド・トリステイン。17歳で紫に近い色の髪とブルーの瞳(*1)を持つ美少女。 本編の主な舞台となるトリステイン王国の王女(後に女王)であり、ルイズとは子供の頃からの幼馴染。 女王としての風格と決断力、民に対する慈愛と責任感も持ち合わせており、多くの臣下や民、ルイズからも強く忠誠を誓われている。 ただし、プライベート、特に恋愛が絡むと、公と私、本音と建て前、表と裏で非常に人間が変わる二面性の大きなヒロイン。 本編では高貴な女王としての公人の顔でいることが多いが、幼少時は城内でルイズといっしょにいたずらに走り回るおてんば娘であり、こちらが彼女の素。 ルイズなどの気心の知れた相手の前ではかなり奔放な一面を見せることもある。 それゆえに世間知らずかつ自分の行動で起こることへの想像が追いつかないこともあり、それらへの後悔から次第に女王として成長していく。 アルビオン王国のウェールズ皇太子とは従兄妹の関係で、ティファニアとも従妹にあたる(*2)。 ウェールズとは恋仲であったが、物語前半で死別してしまったことから中盤まではやや荒れた様子を見せていた。 しかし、次第に才人に思いを寄せるようになっていき、ルイズ、シエスタに続いてヒロインレースに3番目に参戦(*3)。 そしてここからがアンリエッタのヒロインとしての本領発揮。 才人へは偶然にも助けられて、あの手この手でアプローチをかけるようになっていく。 しかも自分に自信のないルイズと違って、自分の美しさに疑いがないので超絶際どいレベルのお色気攻勢。 なお書き遅れたが、まな板幼児体系のルイズと対照的にアンリエッタはバストサイズも含めてプロポーションに非の打ち所がない。 バストサイズでは後にティファニアに抜かれたが、全体のバランスという点ではアンリエッタが最高レベル。 そんな美少女が裸や下着姿で不安げな面持ちですがってきたら普通は落ちる。才人も何度も落ちかけた。 基本的にラブコメの雰囲気な他のヒロイン達と比べてギャグやコメディ要素が希薄な分、ゼロの使い魔で屈指のエロさを誇る。 こんな感じなのでルイズとしても気が気ではなく、シエスタ以上に手段を選ばないこともあって最大の敵と認識されている。 そういうわけで、ラブコメであるゼロの使い魔では随一のトラブルメーカーとしても不動の地位。 王女や女王としての命令でルイズたちが窮地に陥ることもあるが、それ以上にルイズがアンリエッタに女子力で敵わなくて自信喪失というほうが被害が大きかったりする。 物語の中での存在感は終始大きく、ルイズと並んでゼロの使い魔という物語を象徴するヒロインだと言えるだろう。 なお、女王という立場上戦う機会は少ないが、メイジとしては水のトライアングルクラスに達していて、そこらの騎士よりはるかに強い。 【作中での活躍】 本編には2巻から登場。 ゲルマニアからの帰り道、学院に立ち寄ってルイズと久しぶりの再会を喜び合う。 この際、アルビオン王国が革命派レコン・キスタによって滅亡寸前であり、恋仲であったアルビオンのウェールズ皇太子の元に以前に送った恋文が残っていて、これが公になるとゲルマニアの国王と政略結婚を前提にした同盟が破産するかもしれないと、秘密裏に回収するようにルイズに命令を下す(*4)。 しかしこれはただの学生であるルイズの手には完全に余る任務であり、支援としてワルド子爵を送るが、ワルドは敵の内通者であり、ウェールズ皇太子は暗殺され、ルイズたちも危うく殺されかける瀬戸際までいってしまった。 かろうじて生還したルイズからこの話を聞いたアンリエッタは強いショックを受け、しばらくの間消沈する。 だがレコン・キスタに乗っ取られたアルビオンが条約を破って攻め込んでくると、ウェールズの仇を討たんと弱気になっている臣下を一喝して戦場に駆け付け、兵たちの士気を大きく鼓舞した。 けれども、恋人であるウェールズを失ったアンリエッタの傷心に付け込んで、レコン・キスタは死んだウェールズをアンドバリの指輪の効果で生き人形としてよみがえらせ、アンリエッタを誘拐しようとする。 ラグドリアン湖の湖畔で止めようと駆けつけたルイズたちと対峙し、アンリエッタはたとえ操られていたとしてもウェールズへの思いを捨てきれないと思いを吐露する。 「それは間違っている」と説得しようとするルイズや才人の言うことも耳を貸さず、アンリエッタはついにウェールズとの共同によるヘクサゴンスペルでルイズたちを排除しようとする。 しかしここでルイズのディスペルの魔法が覚醒。わずかな時間正気に戻ったウェールズを、哀しみの中で見送る悲嘆を味わうことに。 以後は、トリステイン王国はレコン・キスタとの戦争に巻き込まれていくが、アンリエッタにとって戦争は本意ではなく、しばしば取り乱していた。 特にワルドの裏切りの件もあってメイジに対する不信感が募り、自身の親衛隊として平民の女性剣士のみを選抜して編成した銃士隊を結成する。 この判断は正解で、隊長のアニエス以下優秀な人材揃いで、その後のアンリエッタを大きく支えることになっていく(*5)。 王政府内にレコン・キスタの内通者がいると知れた時には、あぶりだすために自ら自作自演の誘拐劇を演じて、見事に内通者を始末することに成功した。 なおこの際に才人をルイズの使い魔で信用できるからという理由で連れだし、街中を平民に扮して散策している。 しかし途中で自分を探す兵士の目をごまかすため、才人ととっさに『雨に濡れた薄着姿でベッドで抱き合って口づけをかわす』という荒業で乗り切っている。 なお本人は平然たるもので、アンリエッタのキャラがこのあたりで完成したようだ。 その後はアルビオンに向かい、戦争の指揮に当たる。 この頃には、戦死者の慰霊に心を砕くなど、優しさを失わずに戦争に向き合い続ける姿に、臣下は信頼を深めていた。 転機は戦争末期。7万のアルビオン軍に対してトリステイン軍は窮地に陥るが、才人の懸命な防戦によって救われる。 このことと、ラグドリアン湖で自分の前に立ちふさがってきたことなどから才人に対して興味を深めていき、才人の帰還後には彼に異例のシュヴァリエの称号を与える。 決定的となったのは9巻のスレイプニィルの仮装舞踏会の際で、この時アンリエッタはルイズに仮装していたが、仮装舞踏会ということを聞いていなかった才人に(*6)ルイズと思い込まれて、そのまま口づけまでしてしまう。 正体が明かされた後は、才人に対して恋心を吐露。才人も無碍にはできず、再び口づけをかわす。 その後、シェフィールドの襲撃を退けたルイズにも自分の恋心を告白、平手打ちを食らわされるものの、正式にルイズとは恋のライバル関係となった。 以後は女王の政務に励むために城からは動けない生活が続いたが、母からの見合いの話を拒絶するなど才人への思いは薄れることは無かった。 しかし、才人に恩賞として与えたド・オルニエール領の城と王宮が魔法の仕掛けでつながっているというアクシデントが発生して、夜の宮殿の自室に才人が迷い込んで、そのまま夜を共にする。 しかも悪いことにその光景をルイズに目撃されてしまい、完全に密通にしか見えないことからルイズは自信を喪失して家出をしてしまう事態を招いてしまった。 てか半分くらいは才人が悪い アニメ版ではより感情をあらわにするシーンが増え、毅然とした女王と、未熟な恋に翻弄される少女という二面がより強調された。 また、お色気シーンも増えて、上記の才人といっしょのシーンではなまめかしい裸体を存分に披露してくれる。 これらの他、アニメやドラマCDなどの外伝的なストーリーでの、女王としての責任が緩むところではけっこうはっちゃけていたりもする。 女王としての運命を受け入れようとしている彼女であるが、黙って言いなりになるほど物分かりはよくないようだ。 アニエスやマザリーニ枢機卿の胃が心配になるが。 【人間関係】 ルイズ 幼い頃からの親友であり、恋のライバル。 悪意はないものの何度も窮地に追いやることになってしまい、そのことで心を痛めている。 しかしルイズからは一切恨みを持たれてはおらず、国を治める者としての重責を心配されており、終始に渡って忠誠心が揺らぐことは無かった。 ただし才人を取り合う間柄としては別で、アバズレ呼ばわりされたことも。 才人 ウェールズ亡き後に次第に思いを寄せるようになっていった。 そのためシュヴァリエの称号を与えるなど厚遇していたが、それが他の貴族の才人への嫉妬を買うことにも繋がってしまった。 才人からも憎からず思われてはいるが、彼のルイズへの思いを変えるまでにはいたらなかった。 ウェールズ アルビオンの皇太子。アンリエッタとは相思相愛の仲ではあったが、彼自身は国際情勢の流れなども冷静に判断して、かなわぬ恋であると認識していた。 それでもアンリエッタのことを案じ続けていたがワルドに手にかかって暗殺されてしまい、後にアンドバリの指輪の効果でゾンビとして操られてしまう。 2度目の死の間際、正気を取り戻すことができ、アンリエッタに「自分を忘れて別の男と幸せになってくれ」と言い残して息を引き取った。 マザリーニ枢機卿 政治家としての師に当たる存在で、数少ない信頼できる側近の一人。 「鳥の骨」と揶揄される堅物で、アンリエッタに苦言を呈することも多いがそのほとんどは的を射た正論である。 ただし、有能で誠実であるのは間違いないが、教条主義的でかつ人を見る目に乏しい一面もある。 レコン・キスタが条約を破って侵攻してきた際にはうろたえるばかりでいたところをアンリエッタに叱責され、ワルドが内通者であったことを見抜けずに全幅の信頼を寄せてしまっていたことは彼の失態に当たる。 また、才人の特別性についても正確には認識できていなかった。 アニエス 銃士隊の隊長。アンリエッタ自らが平民から抜擢した存在で、全幅の信頼かつ絶対の忠誠を誓われている。 裏社会のことにも精通しており、乱世の人材としては非常に有能。 ただしアンリエッタの突飛な行動についていけずに振り回される一面もあった。 【余談】 女王という立場であることから、アンリエッタが作中でおこなったことは良い方向へも悪い方向へも非常に影響が大きい。 特に悪い方向へは顕著で、ルイズが死ぬ危険が大きいのにアルビオンに手紙を取りに行かせた、ゾンビウェールズに誘われるままに国を捨てようとした、教皇やジョゼフにまんまと手玉に取られたことなどはよくファンから槍玉にあげられる。 しかし17歳の未熟な少女が女王として君臨しなければならなくなったことがそもそも無茶であり、アンリエッタの未熟に関しては前王が亡くなっても王位を放棄して国の舵取りをしなかったマリアンヌ前王妃の責任のほうが大きいと言えるだろう(*7)。 才人に対する身分をわきまえない熱烈なアプローチも、女王としてはあるまじき行為と言えるが、それらも窮屈な王宮暮らしの中で結婚相手すら選べない不自由さの反動でもある。 それでもアンリエッタは失敗を反省して、自身の女王としての責任を自覚し、あるべき姿を模索して努力を重ねており、暗愚の王からはほど遠い。 もっとも、才人へあざといばかりのアピールをするところではルイズへの嫉妬も混ざっており、少々擁護しづらい。 そもそもルイズからの証言とは言えルイズ本人が好きになった物を後から好きになって取り上げる傾向があったとか言われてるし こうした悪女っぽいところもあるアンリエッタはヤマグチノボル先生のお気に入りヒロインでもあり、彼女を書くときは相当筆が乗ったとか。 良くも悪くも評価が分かれ、好かれる人には好かれるが、嫌う人からは徹底的に嫌われるヒロインだと言える。 ただしその分の存在感は絶大であり、様々なファンタジー作品を見回しても、アンリエッタほどの個性と存在感を持ったお姫様キャラはそうそういない。 だてにルイズの最大のライバルだったわけではないのである。 追記に修正、どうかよろしくお願いいたしますわ。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 建て乙。いつも息子がお世話になっております -- 名無しさん (2022-09-08 13 01 13) 二次創作ではウェールズが死なないで物語が進むこともあるね。ただ、愛していたのかは本人なのかロマンチズムな想い出なのか、バッドになるかグッドになるかはまた別の話。 -- 名無しさん (2022-09-08 13 39 05) 項目名はフルネームの「アンリエッタ・ド・トリステイン」の方がいいんじゃない? -- 名無しさん (2022-09-08 13 42 14) まあ優秀な君主の部類かな。母親がアレなせいで『まともな帝王学』叩き込まれてない割にはだけど。 -- 名無しさん (2022-09-08 21 34 07) 序盤から中盤にかけては傾国の女だけどね -- 名無しさん (2022-09-09 08 59 15) 才人へのハシゴを掛けては外して(外されて)を繰り返した人。ただ(元)王女のタバサが本格参戦したために、作者からアンリエッタはヒロイン除外を余儀なくされた感じ。最終的にはルイズ、シエスタ、タバサ、テファのヒロイン四天王が強すぎた… -- 名無しさん (2022-09-09 10 35 45) 正直ゼロの使い魔で一番好きなヒロインです、はい。特に16巻の密通の時の艶めかしさはヤバい。才人が唯一浮気してしまったのも頷ける -- 名無しさん (2022-09-09 11 45 49) 余談のリンク先、あの方はアニメ界全体の同年代と比較しても覚悟決まりすぎてる女傑だからそれは酷ですて…w -- 名無しさん (2022-09-09 14 28 58) 公爵の娘を死地に送るな。配下が信用できないと言った癖にワルドを同行させるなと色々と言いたい -- 名無しさん (2022-09-09 20 48 55) ↑ルイズ死地に送ったのは確かにアカンけど配下不信はワルドの裏切りが原因だから順序が逆やぞ。 -- 名無しさん (2022-09-09 21 25 15) 先生のニュアンス的にも我儘だからこそ「王」みたいな意味でらしく造形されてるとこあるからね。そこも含めて魅力扱いなのかやはり嫌われる女と言うべきなのか複雑なキャラクター性をしている。 -- 名無しさん (2022-09-10 00 28 34) 「レコン・キスタとの戦争が本意ではない」とあるけど、確か公私混同してなかったっけ?ウェールズの敵討ち -- 名無しさん (2022-09-10 17 15 55) ↑途中送信ミス。国としては防衛戦争、私欲としてはウェールズの敵討ちで、戦争後にルイズ父、に指摘されてたような -- 名無しさん (2022-09-10 17 18 53) 声的にシャナに続いてくぎゅの恋のライバル役か -- 名無しさん (2022-09-11 00 31 42) 薄い本では本領全開発揮 -- 名無しさん (2023-03-19 23 10 45) 名前 コメント
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ゼロの使い魔~三美姫の輪舞~ (全12話終了) 01 使い魔の刻印 02 森の妖精 03 英雄のおかえり (04 噂の編入生) 05 魅惑の女子風呂 06 禁断の魔法薬 07 スレイプニィルの舞踏会 08 東方(オストラント)号の追跡 09 タバサの妹 10 国境の峠 11 アーハンブラの虜 12 自由の翼
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「ここにフーケがいるの?」 「ええ、わたくしの調査によれば」 中から気取られない程度の距離を保って、一行は茂みの中から廃屋を観察 する。「ここからじゃ分からないわね」とキュルケが口にしたのを合図に、一同は一斉に顔を見合わせた。 「誰かが偵察に行かないとね・・・」 「セオリーとしては捨て駒が見に行くべきかしら」 「ちょっと!なんで僕を見るんだい!?」 あーだこーだと言い合うハデな髪の三人を尻目に、タバサが「ギアッチョ」と呟くのとギアッチョが腰を上げるのはほぼ同時だった。 「ちょ、ちょっとタバサ!?」 ルイズが抗議の声を上げる。青髪の少女はちらりとルイズを見ると、 「無詠唱」 ギアッチョを指してそう呟いた。そしてギアッチョがそれを受ける。 「なかなか実戦慣れしてるじゃあねーか小せぇのよォォー いい判断だ・・・この中で最も不意打ちに対応出来るのはオレってわけだからな」 無詠唱という単語にミス・ロングビルがピクリと反応する。腰に下げた剣を抜こうともせずに廃屋へ向かう男の背中を見ながら、ミス・ロングビルは誰にともなく尋ねた。 「ミスタ・ギアッチョはメイジなのですか?」 その質問に、全員が今度は一斉に彼の主を見る。ルイズはどう言っていいものか少々言いよどんだが、 「ま、まぁ・・・そんなものです 厳密には少し違うらしいですけど」 とりあえず当たり障りの無い程度に答えておくことにした。というか、ルイズもそれ以上のことは知らないのである。 魔法ではないとキッパリ言われたのだが、じゃあどこが違うのかと言うことまでは教えてくれなかった。 緑髪の秘書は無詠唱という部分を詳しく知りたがっているようだったが、今はそんな話をしている場合ではない。ルイズは使い魔が襲われてもすぐ助けられるよう、杖を抜いて彼を見守った。 木々に身を隠しながら小屋へと向かう。ギアッチョは別にいつ襲われてもいい、むしろ手間が省けるからとっとと襲ってこいぐらいの気持ちだったのだが、万一逃げられると後が非常に面倒なことになるので真面目にやることにした。 「ねえ、何かあいつ凄く隠れ慣れてない?」 後方で様子を伺うキュルケがそう口にする。タバサやギーシュ達も、その洗練された動きを興味深げに見守っていた。自分の使い魔が褒められて嬉しくない主人がいるだろうか? 「そりゃ、凄腕の暗殺者だったんだからね」 と胸を張りたかったルイズだが、流石にそんなことをバラしてしまうのはどうかと思って黙っていた。 そうこうしているうちに、ギアッチョは廃屋に辿り着く。入り口の横にスッと身を隠し、 ――ホワイト・アルバム スタンドを発動させる。 「人の気配はしねぇが・・・気配を殺す魔法なんてのがあってもおかしかねー 念を入れておくとするぜ」 ギアッチョの足から、小さくビキビキという音が発生する。その音は入り口へ 向かって進み、そしてそこを見事な氷の床へと変えた。 「逃げようとしてもこいつでスッ転ぶってわけだ」 そうしておいて、一分の無駄も無い動きで小屋の中へと滑り込む。身を低くして一瞬で周囲を見渡し、隠れている者がいないかを探した。 「・・・誰もいねぇな」 わざと声に出して呟き、そして敢えて隙だらけの挙動で小屋の中心に立つ。 五秒、十秒。何かが襲ってくる気配はない。逃げ出す気配もない。 「やれやれ」 どうやら本当に誰もいないようだ。別の意味で面倒なことになるなと思いながら、ギアッチョはルイズ達にOKのサインを送った。 「二番手は僕に任せたまえ!!」 誰もいないと分かって俄然やる気が出たギーシュが猛然と小屋に突進し、 「ワアアアアーーー!!」 見事に氷のトラップに引っかかった。一回転したのち背中から落下したギーシュを確認してから、ギアッチョはホワイト・アルバムを解除する。 わざとだよね?わざと解除しなかったよね?というギーシュの恨みがましい視線を清々しくスルーして、ギアッチョはキュルケ達を迎え入れる。 ルイズは小屋の外で見張りをし、ミス・ロングビルは周囲の偵察をすることになった。 まだ床で呻いているギーシュを「てめーも見張れ」と蹴り出して、キュルケ、タバサと共に家捜しにかかる。 程なくして、タバサが無造作に置かれていた破壊の杖を見つけ出した。 「ちょ、ちょっと待って 何かおかしくない?こんな簡単に・・・」 キュルケの疑問はもっともである。ギアッチョは警戒するように辺りを見渡した。 「普通に考えて罠だろうな これから何かを仕掛けてくるか・・・あるいは既に何かを仕掛けているかよォォ」 タバサはスッと杖を掲げると、探知魔法を唱える。 「周囲に魔力の痕跡は見当たらない」 タバサは簡潔に結果を報告すると、指示を待つようにギアッチョを見た。 「となると 外・・・か」 その言葉に答えるかのように、外から何かを叫ぶルイズとギーシュの声が聞こえ――それと同時にミス・ロングビルが室内に飛び込んで来る。 「皆さんッ!土くれのフーケが現れました!!」 ギアッチョ達は急いで外に飛び出す。そこには自分達に背を向けて魔法を唱えているルイズと、杖を取り出したもののどうしていいか決めかねているのかオロオロするばかりのギーシュがいた。 そして二人の視線の先に見えるのは、今まさに森の中へ逃げ込もうとしている黒いローブの人物だった。 次々と放たれるルイズの爆撃をかわそうともせず一目散に茂みを目指している。 「あのローブ・・・間違いなくフーケだわ!」 すぐさま追いかけようとするキュルケとルイズを手で制止すると、 「てめーらは破壊の杖を守れ マンモーニ!てめーはついてこい!」 言うが早いかギアッチョが走り出す。 「えええっ!?ぼぼ、僕がかい!?」 「何しに来たのよあなたはッ!」 キュルケがうろたえるギーシュの尻を蹴っ飛ばし、ギーシュはその勢いで泣きそうになりながらギアッチョの後を追った。 「どうして待機なの!?私も――」 ルイズが今にも走り出そうとするのを見て、ミス・ロングビルがそれを優しく諭す。 「ミス・ヴァリエール もしフーケが逃げている先に罠があった場合、全員で行けば一網打尽にされてしまう可能性があるのです ミスタ・ギアッチョの判断は的確ですわ」 それを聞いて、彼女はしぶしぶながら納得した。 ――そう、的確な判断の出来るあんたなら・・・必ずこうすると思ったよ ギアッチョとおまけの身を案ずる3人の後ろで、有能極まる秘書は彼女を慕う者が見れば卒倒するような笑みを浮かべていた。 小屋から二十数メイルは離れただろうか。土くれのフーケは依然逃走を続けていた。 チッ、とギアッチョは舌打ちをする。 ――こいつは罠を設置してある地点に向かって逃げている可能性がある・・・ そこに辿り着かれる前に、今動きを止める必要があるってわけだ。 ギアッチョはおもむろにデルフリンガーを掴むと、「え、ちょ、何を」という声も無視してそれを大きく振りかぶり、フーケ目掛けて投げつけた! ゴワァァァーンッ!! 金属同士がぶつかり合う派手な音を響かせて、フーケはどうと地面に倒れた。 デルフリンガーに悲しい親近感を覚えているギーシュを放置して、ギアッチョは己の剣を回収する。 「初めてだ・・・こんな酷い扱いをされるなんて・・・」 デルフがぶつぶつ呟いているのも無視。そんなことよりギアッチョには一つ気になったことがあった。 ――今、何故「金属同士がぶつかる音」がした? 脳裏に去来する最悪の可能性を払拭すべく、倒れているフーケを強引に引き起こす! 「――ッ!!」 ローブを身に纏っていたものは、ギーシュのワルキューレを髣髴とさせる青銅の甲冑であった。 「な・・・!?なんだいそれはッ!!」 ギーシュが異変に気付き声を上げる。 「ハメられたっつーことだッ!!」 ギアッチョはそう言い捨てて甲冑の頭部を蹴り飛ばす。氷を纏ったその蹴りに青銅の兜はあっさりと胴から分断され、鬱蒼とした森の茂みへと消え去った。 「コケにしやがって・・・!後ろを見ろマンモーニッ!!」 ギアッチョはブチ切れていた。悪鬼羅刹をも射殺さんばかりの双眸をギーシュに向けて怒鳴る。 「ヒィッ!」という声と共に、ギーシュは殆ど条件反射で元来た道を振り返った。 「ンなッ・・・!!」 ギーシュは絶句した。八体の青銅の騎士が、蟻の子一匹通さぬ密集隊形でこちらへ向かって来ていたのだ。 「既にオレ達はよォォ~~・・・罠にかかっていたっつーわけだ」 バギャアア!!と土に戻りつつあった黒いローブの青銅人形を踏み潰して、ギアッチョは今や2メイル程にまで距離を詰めた甲冑の一個分隊に向き直る。 「わ、罠だって・・・!?」 ギーシュがオウム返しに口にする。 「オレ達とあいつらを分断し・・・あわよくば始末するってところだろうなァアァ。ナメやがって!クソッ!クソッ!!」 ギーシュはとりあえずギアッチョから1メイルほど距離を取った。 「そ、それでどうするんだい!?」 造花の杖を引き抜いてギアッチョに問う。 「ブッ潰して戻るッ!!」 言うがはやいか、ギアッチョの右手が氷に包まれ始め――、数秒後、それは氷の曲刀を形成していた。 「剣の作法は知らねーが・・・こいつで首を掻っ切るなぁ慣れてるからよォォー!」 ギアッチョは腰を落として氷刀を構え、ギーシュがワルキューレの練成を開始し――そして、戦いが始まった。
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【ゼロの使い魔】からの出典 ルイズの杖 タバサに支給された。 エロ凡パンチ・ 75年4月号 ルパン三世に支給された。 才人の世界の30年前のエロ本だったが、ハルギケニアでは『召喚されし書物』と呼ばれていた。 破壊の杖(M72ロケットランチャー) ハクオロに支給された。 アメリカ製携帯式使い捨てロケットランチャー。1発分しかない。 ベトナム戦争の頃登場した兵器の為、現在ではやや旧式の感がある。 大変軽い(重量は発射筒が約2.5kg、弾体が約1.8kg)が、軽装甲車両程度ならば簡単に撃破できる破壊力を持つ。 惚れ薬 エルルゥに支給された。最初に彼女がこれを見つけたときのリアクションはもはや伝説。 異性にのみ有効であり、飲んでから初めて視界に入れた人間を好きになる。 効力は長くて一時間程度。量は一回分のみ。